野村證券「ガリバー」は努力と創意を忘れた

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 野村證券の黄金期が1970年代後半から1980年代であることに異論を挟む向きはないだろう。故・田淵節也氏のカリスマ的な経営の下で、野村證券は巨大化し、ガリバーの異名を取るトップ証券の地位を確固たるものにした。田淵時代の最終局面である91年には、損失補てん問題、暴力団との取引等々が発覚。田淵氏は晩節を汚し、野村證券の成長にもブレーキが掛かったとはいえ、以後もトップ証券として君臨し、野村は輝き続けた。

 1986年9月に編集された社史『野村證券史』(1976年~1985年)は、わが国の資本市場の歴史を知るうえでも有益な資料である。が、ここで紹介するのは、社史の最終ページにある「跋(ばつ)」の内容である。社長から会長に退いて間もない田淵氏が筆を執っている。

〈正しい歴史的評価は、時間の経過を待たねばなるまい。ただ、野心的な仕事に数多く挑戦できたという点で、われわれはたいへん幸せであった。また、日本経済の未曾有の発展がわれわれを支えてくれた〉

 自身が采配を振った昭和50年代をこう振り返り、最後は次の文で締めくくっている。

〈草の根のたくましさ、バイタリティある行動力、そして謙虚な向上心の重要性について、思いを新たにしていただきたいと思う。それが、お客様の期待に応え、新たなる資本市場の歴史を、自らの努力と創意によって築き上げていく確かな道だと信ずるからである〉

 それから33年の歳月が過ぎた。いま、我々が見ているのはこの文面の内容とはあまりにも程遠い、苦悩する野村の姿である。果たして、この巨大証券グループはいかなる明日を迎えるのだろうか。

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source : 文藝春秋 2019年8月号

genre : ビジネス 企業