ジャックス審査部は「大丈夫です」と回答
半信半疑の高山のところに、すぐにジャックスから審査の電話がかかってきた。高山は包み隠さず、自動車ローンを組めなかったことを話したが、ジャックスの女性オペレーターは明るく言った。
「ゴルフスタジアム様のご契約ですから、大丈夫ですよ」
前の契約の残金と合わせ、総額1000万円のローンである。2年間、支払い遅滞がなかったことで安心していたのも事実だが「ジャックスが大丈夫と言わなければ、こんな借金はしなかった」と高山は言う。契約を更新して数ヶ月後、ゴルフスタジアムからの入金が止まり、高山には約1000万円の借金だけが残り、止むに止まれず自己破産を申請した。
一定期間、支払いを続けて信用させたところで一気に取引額を引き上げて「ドロン」するのは、置き引き詐欺の常套手段である。
ゴルフスタジアムは高山が二度目の契約を結んだ時点で、すでにジャックスから1000万円を受け取っている。高山が指摘しているように、この手口で鍵を握るのはジャックスなど大手信販会社による「与信」である。信販会社が金を貸さなければ、取引そのものが成立しない。被害者が事件に引き摺り込まれた背景にも、日頃からテレビCMなどで名前を売っている信販会社への信用がある。
「ゴルフスタジアム被害者を守る会」が債務不存在の確認を求めたのは、ジャックス、オリコ、クレデイセゾン、セデイナ、ビジネスパートナー、三井住友トラスト、東京センチュリーリース、三菱UFJリースの信販会社8社 。この中で、もっとも契約件数が多いのがジャックスだ。ジャックスは、三菱UFJ銀行が株式の20%を保有する筆頭株主であり、三菱UFJフィナンシャル・グループの一員でもある。
高山のケースで適正な審査が行われたのか「文春オンライン」編集部がジャックスにメールで質問したところ、「個別の与信判断に関するご質問については、コメントを差し控えさせていただきます」(広報)との回答だった。
「タダでホームページを作る」という営業マンの話
もう一人の被害者、千葉県のゴルフ場で教える山田幸太郎(仮名、44歳)のケースを見てみよう。
山田も「タダでホームページを作る」というゴルフスタジアムの営業マンの話を信じて契約した。その際、ジャックスの女性オペレーターから電話があり、こんなやり取りをした。
「今回は『モーションアナライザー3』のご購入ということでよろしいですね」
「いや違う。僕が契約したのはホームページの作成だ。モーションなんとかを買った覚えはない」
「そうですか。それではご契約いただけませんので、いったん電話を切らせていただきます」
数分後、ゴルフスタジアムの営業マンから電話がかかってきた。
「ジャックスには、全部『ハイ』と答えてくれとお願いしたじゃないですか。ホームページはちゃんとタダで作りますから。『モーションアナライザー3』を買ったことにしておいてください」
その後、もう一度、ジャックスから確認の電話があり、山田は「モーションアナライザー3」を買ったことにした。「ジャックスとゴルフスタジアムは明らかに裏で繋がっている感じだった」と山田は振り返る。