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「天空の城」にホームを置くクラブが、どこまで収入を伸ばせるか

 ただし上場企業の資本傘下、営利企業としての活動、地域密着は全く矛盾しない。例えばプロ野球の横浜DeNAベイスターズはIT企業がオーナーになり、市民と寄り添う姿勢を高め、それを収益に結びつけている。サイバーエージェントの資本参加によって、ゼルビアはクラブハウスと天然芝グラウンドを整備するための原資を手に入れた。それは未来に向けた強烈な追い風だ。

町田ゼルビア開幕戦 ©AFLO

 大前提としてゼルビアは町田に拠点を置き、町田で活動するクラブだ。2021年には町田市立陸上競技場が1万5千人収容の規模まで拡充される。市の税金で整備してもらって、それをすぐ捨てる勝手はあり得ない。

 一方でスタジアムは「天空の城」と称される立地で、アクセスに大きな難がある。多摩都市モノレールの延伸計画が実現すれば、スタジアムから1キロほどの位置に新駅ができる。一方で2024年には間に合わない。スタジアムがある野津田公園の北門近くでは2027年の開業に向けて、リニア中央新幹線の「小野路非常口」の工事が進んでいる。そこに駅ができれば品川まで10分と便利だが……。まあ無理だろう。

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 チケット収入は売上の20~30%がプロスポーツの適正値で、75億を目指すなら15~20億円まで引き上げる必要がある。しかし今の施設で7000円、8000円の客単価は現実的でない。

一転、「名称は現行のまま継続」と発表

 話を名称問題に戻すと、多くの記事は「サポーターが反対している」と書いていた。一方で藤田オーナーやクラブに対する、直截なメッセージの出し方に顔をしかめているサポーターも多い。意見も白黒でくっきり二分されているわけではない。

「変えることに抵抗感はあるけれど、理由があるなら仕方がない」という“グレー”な感覚を持つ人が自分の周囲には多かった。厳しい意見を持つ人も含めて、藤田オーナーを“敵”として拒絶しているサポーターは明らかに少数派だ。

 ミーティングの内容も受けて18日、藤田オーナーはこのようなコメントを発表した。

「来シーズン(2020年シーズン)に関しては、リーグとも協議し、熟慮した結果、名称、ロゴなど現行のままで継続とさせて頂きます」

 賢明で現実的な判断だろう。名称、ブランドをどう考えるかーー。クラブの「思想」や経営戦略から説き起こさないと、そもそも議論をする意味がない。例えば大きなスポンサーを取るためにクラブ名に「東京」を入れれば有利という説明は理解できる。しかし明快なビジョンが提示され、一定レベル以上の共感を得ないと、改革は成功しない。

 藤田オーナーはサポーターへのメッセージの中でこう述べていた。

「好感度の面からリブランディングに『FC町田トウキョウ』を使うのは難しくなりましたが、一方で知名度、注目度は上がりました。これをサポーターの皆さんと共にポジティブに持っていけるような着地をなんとか目指したいと考えています」

 クラブを自分の“おもちゃ”にする、自分のメンツを優先する様子は一切ない。異論に耳を傾け、ピンチをチャンスに変えようという柔軟な姿勢を感じるコメントだ。

 ゼルビアのオーナーシップは良くも悪くも揺らがないだろう。問題は戦略と実行に尽きる。今回の未来構想はまだリアリティがない。2021年シーズンに向けた「猶予期間」が議論を深め、共感を引き出す時間となることを願いたい。