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「ゼルビアは残す」と藤田晋オーナーが発表――J2町田が直面する改名より難しい挑戦

2019/10/19
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「対立」「炎上」と報じられたが……

 少し荒れた空気の中で藤田オーナーの「ゼルビアという名前は意外と覚えづらい」という意見や、下川浩之会長の「『東京』というブランドをつけないとみっともない」というコメントなど、揚げ足を取られかねない発言も頻出した。文字にして読んでみると中身のある対話もされているのだが、他人の喧嘩ほど面白い娯楽はない。多くのメディアが「対立」「炎上」として扱うことになった。

 しかし「ビジネスvsスポーツ」の構図はミスリードだ。もちろん株式会社の意思決定を行うのは株主で、出資比率の高い人は発言権が上がる。ただし株式会社は社会の公器で、特定の個人がもてあそぶことは許されない。この社会は皆が関わり合って成り立っており、一方的な収奪は長続きしない。

 ゼルビアのトップチームは株式会社だが、経営的な成長を追うなら、なおさらサポーターのニーズを的確につかまなければならない。藤田オーナーとクラブは今回、そこでつまづいた。

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町田ゼルビアサポーター ©AFLO

藤田オーナーが言った「2024年のJ1制覇」を実現するには……

 さらに藤田オーナーはミーティングで「2024年のJ1制覇」「2025年のACL制覇」を公言していた。J1を制覇するような体制を整えるためには、最低でも50億円レベルの年間予算が必要になる。Jリーグに限らずスポーツビジネスは成長産業で、それを見越すとより大きな金額を想定するべきだろう。

 筆者の解釈を加えるなら「2018年度に7億5千万円だった売上を、6年で10倍にする」くらいの含みを、オーナーは示唆していた。要は「2024年までに売上を75億円にする」ストーリーだ。

 一企業一個人が年に60億、70億を負担するならば話は早い。しかしそれは持続可能性が乏しいし、それだけのスポンサーフィーを出す経済合理性はない。収入と支出のバランスが大きく崩れれば、成長どころかクラブの存続がむしろ危うくなる。町田を深堀りできていないクラブが「東京」「日本」「世界」を開拓できるのだろうか?そこは率直に言って疑問だった。