左肘手術を経て「安堵」から「覚悟」へ変わった佇まい
CSファイナルステージで巨人に敗れたショックを消化し、チームも来季へ向けて秋季練習で再スタートを切っていた10月25日。球団から「島本選手について」というタイトルの付いたリリースが届いた。左肘のクリーニング手術を受けて、リハビリ期間に入るというものだった。余力など全くなかった。すべてを出し切ってシーズンを走り抜けたことを象徴するニュースだった。おそらく、夏場から秋にかけて、肘の状態は万全でなかったはずだ。その頃、ナイターゲームの日も、朝から2軍の鳴尾浜球場に姿を見せ、トレーナーの治療を受けていたことも今ならうなずける。それでも、チームが激しい3位争いに突入していく中で直球の球速、キレはV字回復を見せた。ただ投げ続けただけでなく、浮き沈みのあった中で胸を張ってゴールテープを切った。
昨年12月から筋肉美を競う「フィジーク」の大会に出場する幼なじみの助言もあって人生初のプロテインを摂取し始め、体重増に着手。シーズン中は、誰よりも早く球場に到着し、ストレッチやトレーニングなど試合への準備を進める「ルーティン」も確立した。限られた時間を無駄にせずに作り上げた土台があったからこそ、肘が悲鳴を上げてもマウンドに立ち続けられた。
手術後、鳴尾浜球場でリハビリを開始した26歳は少しだけ緊張のほぐれた表情だった。「もうリハビリに入るんで、自分の中でもう来年へ向けての戦いは始まってます。1年やっただけじゃだめなんで。手術して、またしっかり投げられるところをアピールしていかないといけないです」。あのLINEのやり取りから1カ月も経っていなかった。「安堵」から「覚悟」へ変わった佇まいは、苦節9年で花開いたサウスポーの本能に他ならない。
チャリコ遠藤(スポーツニッポン)
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