文春オンライン

2019/12/28

 肩を落とす小園に最初に手を差し伸べたのは緒方孝市監督(当時)だった。「次の日もあるんだから。切り替えて頑張れ」。穏やかな口調でかけられたその一言が、プレッシャーに押しつぶされそうになっていたルーキーを救ってくれた。その後再び練習に戻る小園のもとへ今度は続々と先輩たちがやってきたという。「長野さん、(上本)崇司さん、野間さん、(鈴木)誠也さん、坂倉さんがめっちゃ明るく声をかけてくれました。『気にすんなや!』『俺らも何回もあるから!』って。僕のせいで負けてしまったのに、先輩たちはそんな風に思って声をかけてくれたんだって。助けてもらいました」。超満員のマツダスタジアムではミスしたくないと大事にいきすぎていた。「ビビりまくっていました。だから足が止まってしまってミスしていたんです」。消極的な気持ちが生んだミスだっただけに、先輩たちの言葉が小園の背中を押してくれた。

 7月1日に登録抹消となったが7月15日に登録されるまでのこの期間が「自分が変わったとき」だった。ミスを怖がらずとにかく積極的に。もう1回1軍に上がるんだという気持ちでがむしゃらにボールを追い続けた。結局シーズン最後まで1軍に帯同。58試合に出場して失策は9つと、前半3試合で4失策を記録したことを考えると激減したと言っていい。「貴重な経験をさせてもらって感謝しかない」と生きた勉強をさせてもらえたことは必ず来季につながるに違いない。

“報徳学園の小園君”はすっかり姿を消していた

 最高のお手本がいる。鈴木誠也だ。「結果を出している人ほど練習しているんです」。1軍に帯同したことでトップレベルの先輩たちの全てを見られたのも大きな財産となった。「誠也さんはいつも早く来て練習しているし、試合が終わってからもカンカン打ってるんです」。良い目標がすぐそばにいることで目指すところはもちろん高くなる。

「全然誠也さんに追い付いてないんで、相手にもなっていません。もっとやらなあかんっすね」。ようやくプロ1年目を終えたばかりにもかかわらず、鈴木誠也と競えるレベルまで行こうとしているのがすごいところだ。もはや私が知っている“報徳学園の小園君”はすっかり姿を消していた。

 小園の来季の目標は「ショートでレギュラーをとること」だ。菊池涼介のカープ残留が決まった。昨年不振に陥った田中広輔もだまっているはずもなく、内野手争いは簡単ではない。この日も取材前に「下手くそなんで」といいながらノックを受け続けていた。どこか表情はワクワクしているようにもみえる。自動車運転免許も取得し野球に集中する環境はばっちり整った。パフォーマンスを高めるためピラティスにも挑戦するなど、初めてのシーズンオフは充実した時間になりそうだ。

 最高のお手本になる先輩たちに囲まれてさらなる成長を遂げるであろう来季。タイプは違うが今季のヤクルト・村上宗隆以上にインパクトの残る2年目のシーズンになる可能性は、十二分に秘めている。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ウィンターリーグ2019」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/23010 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー