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あなたのマンションは「資産」になるか? それとも「お荷物」になるか?

『生き返るマンション、死ぬマンション』 (荻原博子・著)

note

築41年の中古物件なのに価値が6割も上がった!

――築10年を超えると、あちこち傷んできますから、大規模修繕が必要なのですが、今ある修繕積立金だけでは十分なことができない。かといって、追加して何十万円ものお金を出すのはきつい。しかし、このまま放置したら、マンションの資産価値はさらに下がってしまう。もう八方塞がりの状態です。ところが、お先真っ暗の気持でいたところに、荻原さんの『生き返るマンション、死ぬマンション』が出たので、もう目を皿のようにして読みました。まだ、希望はあるんですね!

荻原 志あるところに道は拓ける! 私はそう思っています。しかも、それほど特別なことをする必要もないんです。少し頑張れば誰にでもできる、そんな方法で、マンションを再生させることは可能なんです。

――具体的にはどんな方法があるのでしょうか。

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荻原 まず、メンテナンスをしっかりして資産価値を落とさない方法から考えてみましょう。

 たとえば、築年数が古くなると、配管が傷んできます。これは、いずれ工事をして取り替えなくてはなりません。普通、管理会社に丸投げすると、まず、工事の時期の調整がたいへんです。管理会社は全戸一斉に工事をしようとしますが、住民にはそれぞれ事情というものがあります。うちは子どもが受験だから今年は困る、来年になると親をひきとって介護をしなくてはならないから今年中にしてくれ……何十、何百という家庭の事情を考えてスケジュールを組むのはたいへんです。それだけで工期は延び、費用は高くなります。しかも、管理会社はたいてい、工事を自分のところの関係会社に下請けに出し、そこがさらに孫請けに出し、というふうにいくつもの会社を経由しますから、費用も割高になってしまいます。

 私が今回、取材した京都のマンションでは、管理会社を使わず、管理組合が主体となって工事の計画を立てました。もっとも驚いたのは、各戸にお金を配って、5年以内であれば、お宅の都合のよい時期に工事を発注してください、業者も自由に選んでください、というふうにしたことです。もちろん、仕上がりがばらばらでは困りますから、一定の基準は設けて、業者にはそれを守ることを誓約してもらいますが、みんなインターネットなどでより安い業者を探して発注しますから、費用も安くあがりました。じつは、管理会社に頼んでも同じ業者が工事をするのですが、直接、頼むから安くなるんですね。管理組合は配るお金は一律ですから、うまく交渉すれば結構なお金が残ることになります。こうして、5年間で配管工事はすべて終わり、住民も満足でした。リフォームを考えていた家では、この工事にあわせてそれを実施して、結果として資産価値が上がったケースもあります。

――修繕は頭の痛い問題ですが、管理組合や理事会がしっかりしていれば、費用も安くなるし、住民の理解も得られやすいということですね。

荻原 じつはこのマンション、それほど便利な場所にあるわけでもない普通のマンションで、築41年とかなり年季の入った物件なんです。それなのに、買った時より値段が2割から6割も上がっているんですよ。

 ここでのポイントは、自主管理です。管理組合や理事会がきちんと機能すれば、管理会社よりもずっときめ細かい対応を、安い費用でできるのです。このマンションでは、修繕工事の多くをインターネットによる公募入札にしています。それだけで、おおむね7割の費用でできるそうです。だから、修繕積立金は周りのマンションと変らないのに、資産価値を維持、さらには上げることもできているんですね。

 また、修繕の技術も進んでいます。たとえば、鉄筋。鉄は腐食するので、年数がたつと弱くなり、場合によっては爆裂という事態も引き起こしかねないのですが、今は塗るだけで鉄筋を再生する薬もあるんです。亜硝酸リチウムという薬品を鉄骨に湿布のようにして塗ると、錆びた鉄骨も再生するというのです。こうした最先端技術も応用することで、マンションはいつまでも生き続けることができるのです。