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あなたのマンションは「資産」になるか? それとも「お荷物」になるか?

『生き返るマンション、死ぬマンション』 (荻原博子・著)

note

自分の資産は自分で守る!

――自分たちのやる気がマンションを生き返らせる。他人任せではダメですね。それに、不動産業者というのは、いくら大手でも安心できない。本書にも登場しますが、三井不動産、三菱地所、住友不動産という、日本を代表する不動産業者のすべてが、欠陥マンションを販売していました。

荻原 2015年に発覚した三井不動産レジデンシャルの“杭打ち偽装マンション”は衝撃的でしたね。最初にニュースで知ったときは、全棟建て替えるというので、さすが大手の旧財閥系は対応が早いし安心だ、と思ったんです。でも、取材してみると、建物が傾いたおかげで生じた手すりのズレが見つかったのは2014年のことだった。住民がそれを三井不動産レジデンシャルに問いただしたら、「東日本大震災のためだ」と言ったというんですね。震災の影響なら補償がありません。そんなことはないだろうと、住民が粘り強く働きかけて、やっと杭打ちデータの偽装がわかった。そこまで1年近くかかっているんです。ですから、私たちは、自分の財産を守るのは自分しかいないんだということを強く認識しなくてはいけませんね。

――まずはマンションの資産価値を維持する。しかし、築40年ともなると、こんどは建て替えが問題になってきます。くわしくは本書を読んでもらうとして、結論だけうかがうと、普通のマンションでも建て替えは可能なんですね。

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荻原 大丈夫です! 30代でマンションを買った人が建て替えに直面するのは70代です。すでに退職し、年金生活では新たな建て替え負担に耐えられない人も多いでしょう。そんなケースでも、建て替えに挑戦し、実現したケースをたくさん盛り込んでいます。きちんとメンテナンスして、建て替えをすれば、マンションは100年もつのです。読者のみなさんにも、この「100年マンション」を目指してもらいたいと思います。

 私には、ある後悔があります。最初に話が出た、国が住宅政策の大転換を行ったとき、私は「週刊文春」で、「住宅金融公庫『金利2%』の甘いワナ」という記事を書いて警鐘を鳴らしたのですが、私の力不足で、多くの人がこのローンを借りて住宅を買い、その後、破産してしまいました。もっと大きな声で言っておけばよかった……それが私の後悔です。その人たちに、一筋の光明があることを伝えたくて、この本を書きました。

――私も、読んで勇気がわきました。次の理事会の議題にしたいと思います。

荻原 ぜひ、そうしてください。

荻原博子(おぎわら・ひろこ)
1954年長野県生まれ、大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。以後、経済ジャーナリストとして活動。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを平易に解説。近著に、『荻原博子のハッピー老後』(毎日新聞出版)、『隠れ貧困――中流以上でも破綻する危ない家計』(朝日新書)、『10年後破綻する人、幸福な人』(新潮新書)。

生き返るマンション、死ぬマンション (文春新書)

荻原 博子(著)

文藝春秋
2016年12月20日 発売

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あなたのマンションは「資産」になるか? それとも「お荷物」になるか?

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