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38歳子なし漫画家「孤独死でもいいと言っても、なかなか即死はできない」

漫画家・カレー沢薫さんインタビュー#2

2020/12/08

――そういえば、伯母の友達や恋人は、漫画には出てきませんね。

カレー沢 定年退職後は人との縁が切れてしまったという設定なんです。

 というのも、長く会社に勤めていた方って、仕事を通じたつながりはあるけど、退職後は縁が切れてしまうことが多いらしい。とくに会社で役員を担うなど地位が高かった人は周囲にイケてた姿を見せていたから、隠居して普通の老人になってしまった姿を見せたがらないそうです。

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――退職して初めて、肩書のない自分に出会うんですね。

カレー沢 そうなんです。お年寄りに向けたコミュニティはたくさんありますが、人より上の立場に慣れてしまうと、平等なコミュニティに一から入るのが大変です。

 主人公の伯母も役員を担うまでのキャリアを積みましたが、そこで孤立しました。彼女も、人間関係を大切にするなど少し違う方法を取れば、亡くなり方に変化があったのではないでしょうか。

©iStock.com

――伯母の孤独死は、最初こそ悲惨な人生として描かれていますが、途中からは「先輩」と鳴海から尊敬される姿に変わっていきます。

カレー沢 伯母自身の人生が変わったわけではないのですが、彼女のことを深く知っていく中で鳴海の気持ちが変化していくんです。

 孤独死は見た目が悪く亡くなって、「悲惨な人生だった」というイメージで記憶に残ってしまいがちです。でも、人生のすべてが悲惨だったわけではないでしょう。だから伯母にも人生を楽しんでいた余韻を残しました。そこに鳴海は共感したのでしょうね。

「自分が苦しまない」ことを念頭に置いた理想の終活

――漫画の連載中、カレー沢さんが終活に向けて行動したことはありますか?

カレー沢 老後に向けた資産管理のために家計簿を始めました。これまでは赤字にならなきゃいいか、くらいに思っていたんですが、税金を減らそうと努力するようになりましたね。つみたてNISAなどの知らないサービスや制度も、調べてみてやれそうだったら挑戦しています。

 私はコミュニケーションが得意な方じゃないんです。だから、連載当初は知識とお金だけで老後をなんとかできないかなと考えていたんですが、調べれば調べるほど、誰にも頼らずにひとりで死ぬことは難しいとわかってきました。

 かといって、老後や孤独死をフォローするために、「友達をつくる」とか「家族と仲良くする」という「絆づくり」は難しい。コミュニケーションが苦手な人の中には、そういうことができない人が一定数いるんです。私もそれに当てはまります。

 だからこそ、福祉などの社会との関わりは大切。断ち切らないようにしたいと思っています。