「自分の場合は胸の中央、少し下の部分に組長の名前を入れている。これは子分としてこの道で生きていくことを示すもの。例えば、刑務所の風呂で裸になった時に、身体に名前が入っていると、周囲から『この人はあの親分のところの若い衆か』と認識されることになる。それと同時に、親分の名を広めるという目的もある」
痛みに耐えることにも意味がある
刺青は、針で肌を傷つけながら着色料で描いていくことになる。その処置は激痛を伴うようだ。
「刺青を入れるのはとにかく痛い。耐えられない限界の痛みのちょっと手前。かなりの激痛だ。彫師に入れてもらうのは1回につき2時間から3時間くらい。それを1週間に2日やるのが限界だ。人によっては、翌日に発熱して寝込んでしまうとか、腫れあがってしまうということもあると聞いている。この痛みに耐えることが『ヤクザになる』ということにつながってくる」(前出・冒頭の指定暴力団幹部)
そもそも刺青は、江戸時代には鳶職や火消し、博徒などの間で流行した。デザインは竜や鯉、鬼、生まれ年の干支にちなんだもののほか、流行していた芝居の登場人物も人気があったという。一方で、顔や腕にワンポイントで入れた刺青は当時の刑罰の一種でもあった。
現代の暴力団員が好むデザインは、竜、鯉、観音像などさまざま。竜や鯉については「昇り竜」や「鯉の滝登り」など、出世するとのイメージにつながることから人気があるという。観音菩薩像や動植物などを彫ることもある。これらは、一般的には「和彫り」と呼ばれている。上半身全体に入れたり腕だけなど様々だ。倶利迦羅紋々(くりからもんもん)という俗称もある。
「彫師は結構な忙しさだ」
彫師の元で、デザイン帳のようなものが提示されて選ぶこともあるという。料金は1時間につき、1万~2万円が相場のようだ。
若者に人気のタトゥーも、刺青と基本的に同じもので、針で肌に傷をつけて着色料を入れていく。一般的にはファッションの一種で「洋彫り」と称される。アルファベットやローマ数字を並べたものや、動植物、幾何学模様などこちらもデザインは様々だ。欧米の一部の人気ロックミュージシャンや俳優らがタトゥーを入れていることなどから、国内でも若者の間で流行している。