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飲食店へいつまでも休業や時短をお願いするわけにはいかない

――有効性の高いワクチン開発という「福音」と変異株という「脅威」が同時に到来し、私たちはどう構えたらいいのか、複雑だ。

尾身 緊急事態宣言の解除後、感染リスクを抑える工夫をしつつ外に出てもらえるようになるのが理想ですが、それこそが先ほど申し上げた「感染症に強い社会」づくりです。

 例えば、飲食店にいつまでも休業や時短をお願いしているわけにもいきません。行政がしょっちゅう見回りを続ければ、警察国家のようになりかねません。

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 そうではなく、換気、人数制限を組み合わせた対策ができているお店への認証制度をよりよくしていく。また、どのような行動は感染リスクが高く、どのような行動は感染リスクが低いということを、社会のみんなが共通の理解を持つことも必要です。

 さらに、これまでは、人々の協力に頼る部分も多かったですが、これからは、ワクチン以外にも、先ほど申し上げた健康アプリや検査、疫学情報のIT化及びAIを活用しての情報分析などテクノロジーの活用を加速していくことが重要です。

 こうした工夫を重ねることで、感染症に強い社会というものを少しずつ試していく時期がやってきていると思います。先ほどまでお話しした検査やデータ集約は、そうした社会づくりのツールになります。

 

――欧米では2020年の死亡数が平年を上回る「超過死亡」が生じたが、このほど明らかになった最新の人口動態調査によれば、日本の20年の死亡数は前年を約9000人も下回った。コロナのための感染対策が、インフルエンザや肺炎などの流行を抑制したとみられ、約2万人ずつ増えていた傾向から見ると平年より約3万人も死者が減った計算になる。一方で、コロナ対策のために政府は巨額の予算を支出してきた。このバランスに見直す余地はないのか。

尾身 医療現場は今、コロナに対する非常に強い危機感を持ってなんとかコロナによる死者を減らそうと力を注いでいます。ただ、コロナ以外の一般医療も国民の健康にとって大切なものです。

 一人の高齢者にとっては、コロナによる死も、ほかの疾病による死も同じように死として近づいてくる。現在はパンデミックを抑止するために「コロナ診療」を重んじていて、結果、一般医療に犠牲を強いている可能性があります。

 いつまでこの構えを続けるのか。こうした状況は長くは続かせるべきではないと思います。ちなみに、巨額の予算支出については、日本のような個人への強い縛りを行なえない国で対策の効果を上げるためには、必要なものであったと考えています。

――マスクはいつになったら外せる?

尾身 まだ医療従事者のワクチン接種も済んでいない状態ではありますが、高齢者への接種がすめば、一定程度の安心感ができる、と見てきました。ただ、今回の変異株の登場で、比較的若い人でも重症化する可能性が出てきました。このため、シナリオは少し、変わってきていると思います。

 今後、一般の人に接種が広がったとしても、感染はしばらく続くと思うので、マスクの着用もしばらくは必要でしょう。22年の年が明け、2回目の接種が進行していくと徐々に、コロナも一般の病気と同じような感覚で受け止められるようになっていくのではないでしょうか。

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