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会釈から始まり、外国人に話を聞くようになって考えが変わった

 しかしながら、町中の揉め事はあれども、実際にそこに住み、顔を合わせるようになってしばらく経つと、状況は変わってきます。顔を認識するようになり、スーパーの買い物でお互い会釈をするようになり、公園で子供同士が遊ぶようになると自然と会話をするようになります。「どこから来たの?」「ベトナムのダナンという街です」「ああ、行ったことある!」

 あたり前のことなのですが、日本を選択してやってくる外国人にも理由があり、生活があり、家庭があって、人生を送っているのです。いままでは、近所に住んでいるけど得体の知れない外国人だった人たちは、れっきとした社会人であり、日本で暮らす隣人であり、幸せと懊悩を併せ持つ立派な人間だということが分かります。彼らなりに日本社会に溶け込もうという努力をし、しかし自分たち固有の文化の生活は守る。感情や現実の鬩(せめ)ぎ合いもありつつ、良い人生を送りたいと考える人たちもいます。

 彼らとよく話すようになると、一緒にやってきた一族の若者が仕事を見つけられず料理店の良からぬ連中と付き合っているようで悩んでいるとか、最近ようやく下の子が日本の小学校に通って友だちができるようになったとかいう話を聞かされ、こちらも考えが変わってきます。それまで警戒感を抱いていた外国人に対して、こちら側も一歩彼らのほうに踏み出してともに協力していかなければ、ゴミから自転車から騒音からこの街の問題は解決しないのだ、ということに気づくのです。

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日本の人口減は年間30万人。昨年の移民数は15万人

 日本全体に目を転じれば、先行きの明るくない日本経済、閉鎖的な日本社会では、海外から優秀な移民に来てもらおうにも来ないんじゃないか、労働搾取と悪名高き外国人技能実習制度を人手不足に悩むコンビニ業界にも使えるようにしようとか、地方経済の担い手はその地域の最低水準の時給で雇う外国人に依存して久しいとか、世界に比べて豊かであった日本が徐々に海外各国の発展とともに追いつかれ、追い越されて悲惨な話ばかりが喧伝されるようになりました。

 しかしながら、実際に日本の移民にかかわる状況を見返してみると、いま日本に住んでいる外国人の数は実に230万人に上り、2016年は新たに15万人が日本にやってきています。いまの日本の人口は毎年自然減が30万人であって、その半分は移民によって埋まっているというのが現実です。もはや、我が国は日本人という謎の単一民族による純血国家だという妄想が成立せず、本来の中国・韓国からの渡来人や台湾やロシア方面からの流入によって四万年前から民族ごたまぜの日本なのだ、日本の土壌からにょきにょき純血日本人が生えてきたわけではないのだというところから考え直さなければならないと言えます。

 それは、日本人が日本語を話し、日本の法律を守って生きていくところに外国人がやってきて秩序が乱れて困ったね、といういまのフェーズから、いろんな国からやってきたいろんな文化や背景を持った人たちが暮らしていけるような決め事をどう用意していくのか、考えなければならなくなったということです。一口にパラダイムシフトが起きたからみんな準備しろという話ではなく、移民が大量に住み着いている地域はまず外国人の失業を食い止める地域政策を打たなければなりませんし、移民とは言え日本で暮らすからには将来日本人になることを前提に生涯教育ができるような仕組みも構築していかなければなりません。

外国人労働者は介護分野でも活躍が増えている ©iStock.com