「本当はアメリカでもっと働きたかったんですけど、1996年にスカイスパがリニューアルオープンすることになりました。そこで、自分の考えを反映させるためには、早く戻った方が賢明だと思って帰国しました。これからの時代はサウナではなく“スパ”にした方がイメージを変えられると思ったんです。それでリニューアルに際して“スカイスパ”というネーミングを提案したら先代は、『いや、ちょっと待て。スパなんて言葉、聞いたことないぞ』といった反応でした(笑)。
それで先代もいろいろ考えたのでしょう、ある日会議室のホワイトボードに“サウナ白夜”って書いてあったんです。今だったら、結構いいと思うんですよ。サウナブームだし、フィンランド=白夜と連想する昭和の感じも、一周して渋いじゃないですか。個人的にはそういう伊勢佐木町にありそうな渋い感じは大好きなんですけど。
でも、幅広い人に入ってもらわないと経営が成り立たないし、これからは1人でも多くの女性のお客さんに来ていただきたかった。だから、“スパ”という響きの方が、サウナは男性のものだというイメージを払拭できると思ったんです。
幻と消えた“サウナ白夜”
僕も借金背負ってやると本気で覚悟を決めていたので、最終的に父も、『じゃあ、勝手にしろ』と言ってくれました。だから社員には、自分たちが決断した方が、思い入れもできるから絶対にいいよって言ってるんです」
幻と消えた“サウナ白夜”。多様な選択肢が増えた今なら、それもアリな気もするが、当時はまだ男性専用サウナが圧倒的な時代。サウナには昔ながらのイメージが付きまとっていた。しかし、金は女性にこそサウナに入ってもらいたいと思っていた。
「昔はサウナというと、どうしても男性優位で、僕が帰国したとき、お客さんの8割が男性で2割だけが女性だったんです。僕が帰ってきて建築図面を見たら、案の定男湯、女湯の面積が8:2になっている。それだと時代に合わないと思い、何とか6:4ぐらいに変更させてもらいました。