北朝鮮の核問題に対し、国際社会は何も対策を講じていないわけではない。しかし、封じ込めは有効な圧力となっているのか。北朝鮮の政治・外交に詳しい宮本悟氏が「国連安保理決議の制裁破り」の実情を解く。(出典:文藝春秋オピニオン 2018年の論点100)

制裁決議が増えてきた

 2017年は、北朝鮮の核兵器とミサイル問題を解決するための対北朝鮮国連安保理制裁決議が3回採択されたほど、国連安保理制裁が強化された年になった。北朝鮮に対する制裁を定めた国連安保理決議は06年以来、合計10回、採択されてきた。そのうち、非軍事的措置である国連憲章第7章41条を根拠にすることが明記された制裁決議は8回である。そのうち3つがわずか1年間だけで採択されたことになる。

 注目に値するのは、これまでは非難対象が核実験でなければ国連憲章第7章41条を根拠にした制裁決議は採択されなかったが、17年からは核実験以外でも国連憲章第7章41条を根拠とする制裁が採択されるようになったことである。

北朝鮮制裁決議を全会一致で採択する国連安全保障理事会 2006年 ©共同通信社

 06年には国連安保理決議が2回採択され、そのうち決議1695号は非難対象が弾道ミサイル発射だったが、国連憲章第7章41条を根拠にすることは明記されなかった。13年にも2回、国連安保理決議が採択されたが、そのうち決議2087号も非難対象が弾道ミサイル技術を使った飛翔体の発射であり、同じく国連憲章第7章41条は根拠にされなかった。ちなみに制裁決議を9回とすることもあるが、それは国連憲章第7章41条を根拠にした8回の制裁決議に決議2087号を含めた場合である。16年にも2回、国連安保理決議が採択されたが、2回とも非難対象が核実験であり、こちらは国連憲章第7章41条を根拠にした制裁決議であった。

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 ところが17年に採択された3回の国連安保理決議のうち、2つは核実験以外が非難対象であったが、3つとも国連憲章第7章41条が根拠にされたのである。