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北朝鮮を相手に、国連の「制裁決議」は有効か 

2018/05/08
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「中国が制裁すればOK」ではない

 対北朝鮮制裁をめぐっては、「中国が制裁すれば、北朝鮮の核・ミサイル問題は解決できる」との主張がある。トランプ大統領もそのように言及したことがある。その根拠とされるのが、北朝鮮の対外貿易額の約90%が中国だというものである。北朝鮮は貿易データを公表しないので、代わりに使われているのは、韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)が発表する『北韓対外貿易動向』である。それによると、貿易データがある88カ国のうち、16年における北朝鮮の対外貿易の92.72%が中国となっている。

 だが、これはかなり注意が必要な数字である。

平壌市内の高層住宅団地「黎明通り」©共同通信社

 じつは北朝鮮との貿易データが存在するのは国連加盟国の半分にも満たない。まして、制裁違反や制裁逃れは貿易データには計上されない可能性が高い。また、経済規模が大きい隣国である中国との貿易額が多くなるのは当然である。中国を経由して輸送されたものは中国との貿易に計上されている可能性がある。北朝鮮に実効的な制裁を加えようとするなら、中国だけではなく、国際社会全体が対朝制裁に動く必要があるのである。

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 北朝鮮は決して国際的に孤立しているわけではない。中国よりも、国際社会には北朝鮮との友好関係を重視する国も多く、制裁破りが続いている。制裁破りは特に第三世界でよく見つかっている。

アフリカがようやく制裁に乗り出した

 16年8月11日、エジプトがスエズ運河に向かう貨物船から北朝鮮製の携行式ロケット弾であるRPG‐7とその関連物資を約3万発も押収した。国連安保理制裁で禁輸品となった北朝鮮製武器の押収としては過去最高量である。

 第三世界(とくにアフリカ)が対朝制裁に目に見えて動き出したのは16年からである。

 オバマ政権時代である16年3月2日に採択された決議2270号から国連安保理制裁では北朝鮮の外貨収入源を絶つことに主眼が置かれ、第三世界でも対朝制裁に動き出す国が増え始めた。国連加盟国には、対朝国連安保理制裁の実施状況などを国連安保理制裁委員会に報告することが求められてきたが、193カ国の国連加盟国のうち、報告書を出した国は16年まで100カ国を超えなかった。それが16年から急増したのである。

 17年10月10日現在、一度でも制裁報告書を提出してきたのは、117カ国である。そのうちの18カ国は、16年に入ってから初めて報告書を出した。そのうち10カ国がアフリカである。15年に初めて報告書を出した国がひとつしかなかったことを考えれば、これは大きな躍進である。

 第三世界で対朝制裁に動き出す国が増え始めたことは望ましい。国連安保理制裁の効果がどこまで出るかは、これからも国際社会が対朝制裁にどれだけ動くのかにかかっている。

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