文春オンライン

92歳の橋田壽賀子が語る「わたしの理想の死にかた」

2018/06/02
note

死を選ぶか生き直すかを考えるチャンス

 日本人は、死について語ることを「縁起でもない」と言って避けようとします。しかし、自分が死ぬときや死んだあとにどうして欲しいかをはっきりさせておかないと、家族が判断に困ったり、迷惑したりすることになります。

 そんなことを考えながら、いずれスイスへ行ってひっそり死ぬつもりでした。ところが、私のように安楽死したいと思っている人が、たくさんいることがわかりました。それならばみんなが外国へ行かなくてすむように、日本でも法律を作って、基準やルールを定めればいいと思います。

 私がイメージしているのは、医師や看護師、弁護士、ソーシャルワーカー、心理カウンセラーなど5、6人のチームを組んで、死にたいと申し出た人の希望を叶えるべきかどうかジャッジする制度です。医師は医学的な見地から診断し、カウンセラーは死にたいという申し出が正常な精神状態でなされているかどうか判断し、弁護士はその人の社会生活や家族関係を調べます。借金やら保険金やらの理由で死ぬことを望んでいないか調べ、家族の賛否を確かめるためです。そうやってチーム全員がOKを出した人だけ、めでたく死なせてもらえるのです。

ADVERTISEMENT

 反対に「あなたは生きなさい」という判定が下された人には、同じチームが引き続き支援します。死なせてあげるべき人には望みを叶えてあげ、生きるべき人には生き直すチャンスとなる制度です。自殺者も減ると思うのですが、どうでしょうか?

親の介護で子どもを犠牲にしてよいのか

 近頃、親の介護のために子どもが仕事を辞めた、という話をよく耳にします。親も子も、それを望むのならかまいません。けれども親がそのことを負担に感じ、重荷になりたくないと悩みながら、なすすべがない場合は、どうすればいいのでしょう?

©iStock.com

 老々介護に疲れ果て、妻が夫を殺して無理心中、といったニュースもよく流れます。本当に胸が痛みます。こんな場合、妻の命だけでも救うことはできないのですか? それに、運よく死ねたらいいようなものの、妻だけ生き残ったら夫に対する殺人です。安楽死の法律があれば、こうした悲劇も減らせるのではないでしょうか?

 自殺を推奨したり、障がい者にマイナスとなる恐れがあるなら、高齢者限定の法律にすればいいのです。重い病気で死期が迫っていなくても、ある程度の歳になって「じゅうぶん生きた。もういいわ」と思う人には、自分からおさらばする権利をもらえないものでしょうか?

92歳の橋田壽賀子が語る「わたしの理想の死にかた」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー