レズビアンカップルの子育ての追跡調査結果は……
なかには、シングルマザーやレズビアンのカップルの子育てって大丈夫なんだろうかと心配になる人もいるかもしれない。たとえば、(それがいけないというわけではないが)女の子のような男の子ばかりになってしまうということにはならないだろうか。
これはちゃんと調べている人がいた。ケンブリッジ大学のスーザン・ゴロンボク教授は、男性と結婚している母親の家族、レズビアンの母親の家族、シングルマザーの家族などさまざまな家族を長年にわたって追跡調査し、子どものIQ、心のIQ、性的志向に基本的な差はないことを明らかにしている(『Modern Families』ケンブリッジ大学プレス、2015年)。
また、『あなたも知らない女のカラダ』などの著書がある産婦人科医の船曳美也子氏によれば、女性とは“育てる性”なのだという。
「ヒトは母親の胎内にいるときに男性ホルモンのテストステロンや女性ホルモンのエストロゲンを浴び、その量によって脳にも性差ができます。女の子の脳は協調性のあるもの、共感力のあるものに惹かれ、人の世話をすることに幸せを覚えるようになるんですよ。だから女性とは、よく言われるような“産む性”ではなく、むしろ“育てる性”だと思います」
「黒船来航」で日本の家族観は変わるか?
そもそも女性は本能的に子育てが上手なわけだ。女性が独りで育てても、女性2人で育てても、何も心配は要らないようだ。
だからといって、すべての家庭に父親は不要だと言いたいのではない。婚外子を増やせと言いたいのでもない。もちろん、精子バンクの利用を勧めるわけでもない。
ただ、パパとママと子どもがいる家族だけでなく、選択的シングルマザーの家族、レズビアンの家族、ゲイの家族……いろいろな家族のカタチがあっていいのではないか。“標準的な”家族のカタチなんてないのかもしれない──。世界最大の精子バンク「クリオス」のトップの来日をきっかけに、そんなことを考えさせられた。
さあ、日本にもやって来るのか、クリオス。それはこの国の生殖医療の指針や法整備、そして家族観を大きく変える黒船の来航となるのだろうか。
(*註)不妊治療における「人工授精」と「体外受精」は混同されがちだが、まったく方法が異なる。人工授精は、採取した男性の精子をカテーテルで女性の子宮に直接注入する。体外受精は、それぞれ採取した男性の精子と女性の卵子をシャーレの培養液の中で受精させる。体外受精には、1個の精子を針で1個の卵子に注入する「顕微授精」もある。いずれの場合も採取した精液をそのまま使用することはなく、洗浄後、遠心分離器にかけて死滅した精子や不純物を取り除いてから使用する。