まもなく5カ月となるウクライナ侵攻をめぐって、岸田政権が対ロ政策を大きく転換するなど、日本でロシアへの視点が大きく変わりつつある。前国家安全保障局長の北村滋氏は、7月8日発売の「文藝春秋」の連載「外事警察秘録」第3回で、オウム真理教とロシアとの関係について記している。
1995年にオウム真理教が起こした一連の事件の背後には、ロシアの国家的関与があるのではないか。当時、日本の外事警察は、そうした視点から真相解明にあたっていたという。
地下鉄サリン事件の数日後、小林武仁外事課長(のちに警備局長)を総指揮官として、オウム真理教の海外での活動実態を解明するためのプロジェクト・チームが発足する。北村氏は調整担当だった。
主要メンバーとロシアとの関係
〈まずプロジェクト・チームは、オウム真理教の麻原以下、主要メンバーとロシアとの関係を調査した。これは教団関係者の海外逃亡を阻止するためでもある。(中略)
我々は、教団幹部らのロシアへの渡航状況を調査した。情報収集・分析の統括は、高須一弘課長補佐(後に近畿管区警察局長)に当たってもらった。
「麻原は〇回、上祐史浩『ロシア大臣』は×回、早川紀代秀『建設大臣』は△回、新實智光『自治大臣』は■回」――。想像を遙かに超えた数字だった。教団幹部のなかには渡航歴が10回以上に及ぶものもおり、麻原とその家族、幹部ら24人で計120回以上に上っていたのだった〉