1983年夏から5季連続で甲子園に出場し、プロの世界で大投手、大打者となったKK(桑田真澄、清原和博)や、1987年に春夏連覇を達成した立浪和義(元・中日)や橋本清(元・巨人ほか)、片岡篤史(元・日本ハムほか)、宮本慎也(元・ヤクルト)らも井元のお眼鏡に適った球児だった。また、福留孝介(現・中日)や松井稼頭央(和夫、元・西武ほか)といった逸材を入学に導いてきた。
当時のPL学園には、硬式、準硬式、軟式の選手たちが集まってきていた。関西圏の中学生は硬式に慣れた選手が多く、硬式野球チームの少ない地方からやってくる選手は、軟式出身者が多かった。
近年の高校野球は金足農業で準優勝した吉田輝星や大船渡の佐々木朗希のように、軟式出身選手の活躍も目立つ。また、2019年のプロ野球の開幕投手は、12球団のうち11球団が軟式出身。ちなみに残った1球団の開幕投手は助っ人外国人。つまり、日本人開幕投手の100%が軟式出身だった。
硬式野球は「塾に通うような形」
中学時代の過ごし方として、硬式と軟式、どちらがその後の人生で大成するのか。井元に見解を訊ねた。
「私も最近、考えさせられることが多い。明桜は秋田の高校ですから、金足農業にいた吉田輝星くんの高校時代の活躍はずっと見てきていました。中学校の軟式野球部だと、練習を毎日やりますよね。
一方、ボーイズリーグをはじめ硬式野球は土日の練習が中心で、塾に通うような形で野球をしている。硬式の指導者は野球指導の専門家が多いですから、学校の先生が監督を務める軟式よりは、野球のテクニックは学べるかもしれません。ただ、週末だけの練習では、体力が伴わない。
だから、ひ弱な選手が硬式には多いような印象は受けます。テクニックは年を重ねていけば覚えていくもの。中学生の年代は、軟式で身体作りを優先的に考えてもいいかもしれません」
少子化の影響もあって、大阪の中学硬式野球は、部員を確保できないチームも多い。その結果、強豪のチームに選手が集まる傾向は強くなっており、全体のチーム数が減少するというに悪循環に陥っている。このあたりは、強豪校に戦力が集中する一方で、連合チームも増加の一途をたどる高校野球に起きている現象に近い。
「親に練習の手伝いをさせるチームが増えたことも、中学硬式野球のチームを減らした要因かもしれない。子どもにとっては、長く練習できるかもしれないけれど、義務づけられたような手伝いを親が嫌って、硬式に入れたがらないんですね」
硬式か、軟式か。どちらが高校での大成につながるかは正解がない。だが、投手の負担を考えれば、重たい硬式球を投げるよりも、柔らかく軽い軟式の方が、中学生年代の肉体には負担は少ないのは確かだという。
「軟式の方が、体の張りは軽減できるでしょう。そうしたことを考えて、小学生の頃は硬式で頑張っていながら、中学から準硬式に切り替わったのが桑田でした」