文春オンライン

「あくまで平家の人々に寄り添った物語にしたかった」アニメ『平家物語』脚本家が語る、“未来が見える目”が生んだ“緊張感”

尾上菊之助×吉田玲子#1

note

重盛とその息子たちを描いた家族物

吉田 コンセプトとしては、重盛とその息子たちを中心に描く家族物として脚本を書きました。それから、重盛の妹、徳子は、平家と朝廷の間で翻弄され続けましたが、泣き崩れるのではなく、起こったことを受け入れる芯の強さを持った女性でした。建礼門院として生き延びて、びわと同じく、みんなの行く末を見届けた人でもあります。

 どう乗り越えて、その後も生きていったのか、彼女なりの価値観や生き様を描いてみたいなと。物語のもう一つの精神的支柱になると思い、彼らを中心に組み立てていきました。

菊之助 重盛と徳子、びわという3人の登場人物の関係、日常がきちんと描かれているから、そこに後白河法皇など位の高い人たちが出てきて話していても、物語に入りやすいと思いました。

ADVERTISEMENT

TVアニメ『平家物語』より

吉田 そうなんです。それに、上の位の人たちの話だけになると、政治的な争い、野心と野心の物語になってしまって、人としての物語にならないんですよね。元々、「平家物語」の有名なエピソードはいくつか知っていましたが、通して読んだことはありませんでした。

 今回、あらためて読んで印象が覆ったのは、思ったほど平家を悪しざまに書いている物語ではないというところ。それから、一般的には「軍記物」に分類されがちですが、いろんなことへの憐れみがたくさん描かれていて、あ、これは感情の物語だ、戦いばかりの切った張ったの物語では決してないんだなと思ったんです。今回は源氏ではなく、あくまで平家の人々に寄り添った物語にしたいと思っていて、滅ぼされる側の人々の感情の動きに焦点を当てました。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

「あくまで平家の人々に寄り添った物語にしたかった」アニメ『平家物語』脚本家が語る、“未来が見える目”が生んだ“緊張感”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春WOMANをフォロー