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「長い古典を歌舞伎にするとき、どこを切り取るかかなり悩む」 尾上菊之助がアニメ『平家物語』の脚本家と語る“平家の苦しみ”

尾上菊之助×吉田玲子#2

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 約800年前の古典が初めてアニメ化され注目を集めたTVアニメ『平家物語』。古川日出男現代語訳版を原作とし、脚本を『けいおん!』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の吉田玲子が手がけた。

 アニメ『平家物語』を「とても面白く観た」と語るのは、歌舞伎俳優の尾上菊之助だ。古典を現代の物語として表現し、語り継ぐことについて、尾上菊之助と吉田玲子が語り合った。(全3回の2回目。#1#3を読む)

監督・山田尚子×脚本・吉田玲子×キャラクター原案・高野文子×音楽・牛尾憲輔の座組で古典「平家物語」を初アニメ化。

「滅ぼされる人々が、何を感じてどう生きたのか」を語りたかった

菊之助 それにしても、長い古典(*原作の現代語訳版で873ページ)を非常にわかりやすく、23分×11話におさめて構成なさっていますが、エピソードはどのように取捨選択なさったのでしょうか。というのも私自身、長編の物語を歌舞伎にするとき、どこを切り取ってどう見せるのか、戦略的にかなり悩むところなんです。

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(TVアニメ『平家物語』より)

吉田 知らなかったエピソードの中に、とても心を打たれるものがあったんです。たとえば、自分たちが滅びる運命にあると悟った平家の若君たちの中には、平家が滅亡に至った壇ノ浦の戦いより前に、心が折れて自ら命を断った者がいたと知って衝撃を受けました。滅ぼされる側の人々が何を感じてどう生きたのか、しっかり語りたいと思ったんです。

 平家の人々の物語、家族の物語を描くことを念頭に置いて読むと、大事な部分と省く部分は自ずと決まっていきました。一番苦労したのは、感情の動きではない部分、史実である出来事に至った経緯を上手にわかりやすく見せるところでした。