もちろん、個人的には統一教会問題は、とにかく手を切ることと再発を防止することに尽力するべきだと考えていますので、統一教会の自爆テロ的なマスコミとの関わり明示については「やっちゃえ」とも思うのですが、本当に問題となるのは宗教団体を隠れ蓑にした反社会的組織である統一教会が、本気で社会的な関係開陳をしたらどうなってしまうのかということです。
統一教会を批判する人が忘れがちなのは、確かに統一教会は日本人の家庭を壊し、日本人の財産、それも確信犯的に韓国へ年間200億円から500億円近くという途方もない金額を送金し続けてきた紛れもない悪の組織であることは言うまでもありません。
宗教としては成立してしまっているもどかしさ
しかしながら、その数がずっと減り続けてきたとはいえ、いまなお数万人規模の信者はいる統一教会は、反社会的行為が問題になるなかで宗教団体を隠れ蓑としているわけですが、曲がりなりにも宗教としては成立してしまっているのが現状です。
これに対して、政府が例えば国政政治家や地方議員、秘書など政治産業に関わる人たちや、霞が関の官公庁に勤めている官僚の皆さんに対して、国家や政党の権限としてこれを「調査」し、もしも信者であったならば処分も含めて検討するのだとなれば、憲法第20条に明記されている信教の自由を真正面から侵害することになります。また、憲法第14条にもある通り「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」ということで、実にデリケートなことになりかねません。
仮にこのまま統一教会が「社会的に問題だ」というレベルの議論で話題になり続けていたとして、特定の社員や官僚、地方議員に対し、その統一教会の信者だからといって一方的に処分したり役職から外したりした場合に、信教が理由で差別をされたと訴訟を起こされる(それも、会社や役所など組織側にとって不利な形で)ことも想定できます。信者もまた被害者の側面があるだけでなく、国民が信教などを理由に差別されない権利を侵害することは相応に重く、それは統一教会がそれだけ悪質なのだということの裏返しでもあります。
さらに、統一教会追及側が往々にして忘れがちなのは、迫害されたマジもんの信者が、その信仰を隠して潜伏する危険性です。単純な話、地方議員や中央省庁の官僚に問題のある宗教の信者が知らないまま温存されてしまいかねません。かつても、検察庁の検事や、大物医師、ある県の地方議会のドンとされる土着政治家が、実は過去に故・文鮮明さんが設立に深く関与した原理研究会の正会員として長らく在籍していて問題となった件もありましたが、その経歴や信仰を隠して潜伏をしていたため、外部から指摘されるまで明るみに出ることはありませんでした。