倍速で気温が上昇している東京
日本では1990年代以降から高温の年が多く現れるようになっている。夜の気温が25℃を下回らない「熱帯夜」や、日中の気温が35℃を超える「猛暑日」が増え、一方で、冬には1日中氷点下となる「真冬日」が減っている。特にヒートアイランド現象の影響も受ける東京の気温上昇は甚だしく、年平均気温が100年で2.4℃上昇、これは国内平均のおよそ倍に当たる。
気温が上昇する中、年々増えているのが熱中症で、定義は「高温多湿な環境下で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が“破綻”するなどして発症する障害」である。
厚生労働省の調べによると、死亡者は1993年以前には年平均で70人程度だったものの、それ以後は700人近くまで急増している。死者の内訳は圧倒的に男性が多いのだが、それは屋外労働者が多いことの他に、男性は相対的に筋肉量が多いため体温が上がりやすいことなども関係しているという。また幼児は大人よりも汗腺が未発達のため汗をかきにくく、熱中症にかかりやすい。さらに乳幼児の場合、熱中症による死亡者の半数が車内に放置されたことが原因という、心の痛む統計もある。
日本の暑さは、これからどれほど厳しくなっていくのだろうか。環境省が発表した2100年の未来の天気予報の内容はこうである。もし温暖化がこのまま進めば、8月には札幌を含めた全国の観測地点の約2割で最高気温が40℃を超える「激暑」となり、ある日の東京では42.8℃、熊谷では国内最高の44.9℃となる。さらに熱中症で1万5000人が亡くなり、そのうえ真冬でも東京の最高気温は26℃の夏日となって、熱中症は季節病ではなくなる。
2085年に夏季五輪ができる8都市とは?
こうなると、東京で3回目の夏季五輪など夢のまた夢である。しかしそれは日本だけのことではなくて、半世紀後には夏季五輪が世界のほとんどの都市で開催できなくなってしまう可能性があると、カリフォルニア大学バークレー校のカーク・スミス教授らは分析している。研究によれば、2085年に夏のオリンピックが開催できるのは、西ヨーロッパを除いた北半球の543の都市のうち、たった8か所に限られるという。
その希少な場所はどこかと言えば、サンクトペテルブルクとクラスノヤルスク(ロシア)、リガ(ラトビア)、ウランバートル(モンゴル)、ビシュケク(キルギス)、カルガリーとバンクーバー(カナダ)、そしてサンフランシスコ(アメリカ)で、カルガリーやバンクーバーなどのように、かつての冬季五輪の開催地が、夏季五輪に適していくようになるという。
すでにバンクーバーは冬にオリンピックを開くには暖かすぎて、2010年の冬季五輪では記録的な雪不足のため山肌が見えていたし、それを白く塗りつぶすために、ヘリコプターやダンプカーで連日必死に雪を運んだほどだった。
この時の新聞にはこう書かれてある。「バンクーバーには何でもある。雪を除いたら……」(※2)。どこかで聞いたフレーズである。
※1 『徒然草』吉田兼好(兼好法師)著
※2 「Olympics: Vancouver has everything but snow as village opens」Otago Daily Times, 19 Feb 2010
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