「中はゲームのクオリティにこだわるあまり、開発チームのメンバーとトラブルになった。その後、ゲーム開発から外れるように業務命令を出され、昨年4月に解雇されたのです」(同前)
中はこうしたスクエニの“仕打ち”に激しく抵抗。退社後、「業務命令は権利の濫用として違法、無効である」「多大な精神的苦痛を被った」と主張し、慰謝料500万円の支払いを求める民事訴訟を起こしたのだ。
チームメンバーに対して厳しい注文
しかし――。判決文には中がゲームを共同開発していたX社やチームメンバーに対し、厳しい注文を出している実態が記されていた。
〈労働基準法の問題があっても土日も働いてほしい〉
〈発売を1、2カ月後ろ倒しして、その間はX社には無償で対応してもらいたいと思っている〉
さらに、中はゲーム音楽をユーチューバーに演奏してもらう企画に関してメンバーと衝突。こんなメールを複数送信している。
〈なぜあなたたちは私を攻撃するのでしょうか?〉
〈それが喜びでしょうか?おかしくないでしょうか?私を止める事が生きがいですか? 人としておかしいと自分で思えませんか?〉
これに対し、メンバーが反論のメールを送ると、その内容について「ハラスメントに当たる」などと主張していたのである。
東京地裁は今年3月29日、中の請求を全て棄却。判決後、中はスクエニに対してこうツイートしている。
〈ゲームとゲームファンを大事にしないスクウェア・エニックスは駄目だと思います〉(4月28日)
不起訴になる可能性はほぼゼロ
特捜部が中を逮捕したのはそれから約半年後のこと。インサイダー取引を行っていたのは、新たな3Dアクションゲームを作るために開発チームの陣頭指揮を執っている真っ最中だった。
冒頭の元同僚が言う。
「なぜ自分の才能を買ってくれた会社を裏切るようなことをしたのか……。ただ、彼は根っからのクリエイターだから株価とかインサイダー情報には疎いはず。あまり深く考えず、誰かに唆されてやってしまったのかもしれません」
前出の記者が後を継ぐ。
「特捜部が逮捕した事件なだけに、不起訴になる可能性はほぼゼロ。しかし、中の場合は初犯で金額も少ないため、執行猶予付きの判決になるでしょう」
針のむしろに座らされた男を救ってくれるのは、青いハリネズミに違いない。