マグロをさばくと、重量の3~5%は「血合い」として捨てられてしまう。これがいま「おいしい希少部位」として注目を集めつつある。時事通信社水産部の川本大吾部長は「レバ刺しのような食味がある。さらに抗酸化作用は赤身の100倍あることもわかった。日本人のマグロ離れ解消につながるかもしれない」という――。
厄介者扱いされてきた「血合い」
寿司ネタや刺し身でお馴染みのマグロ。本マグロやメバチマグロなど種類が豊富で、それぞれ大トロや中トロ、赤身といったネタが定番だが、近年はSDGs(持続可能な開発目標)への関心から、カマや脳天、ホホ肉のほか、中骨に付いた身をそぎ落とす「中落ち」といった希少部位も人気を集めている。
さすがに頭部や骨、ヒレは利用しにくいが、マグロの身でありながら厄介者扱いされ、大半が廃棄処分されている部位がある。それは「血合い」と呼ばれる赤黒い肉。普段はあまり世に出ないこの部位から、近年、驚きの健康パワーが見つかり、マグロ関係者から熱い視線を送られている。
寿司店に卸すマグロに血合いが混じるのはご法度
サバやブリ、サーモンなど、マグロ以外にも血合いはあり、刺し身や焼き魚で食べるとき、目にするであろう。マグロの場合、ほかの魚種とは違って大型は数百キロにも及ぶため、血合いの量も半端ではない。
首都圏の台所である東京・豊洲市場(江東区)では、競り落としたマグロを寿司店などに卸すため、仲卸が解体してブロックやサクに切り分けていく。すると頭やヒレ、骨だけでなく、身の一部である血合いといった副産物が生じてしまう。これら不要部は専門業者に引き渡される。個体差がかなりあるようだが、複数の関係業者に聞くと、血合いの割合はマグロ全体の平均3~5%といったところだろうか。
同市場のマグロ専門仲卸「大花」によると、日々何本ものマグロを扱うため、「血合いは1日40~50キロになる」という。業者には1キロ当たり数円で買い取ってもらっているというが、回収できるのは1日にせいぜい100円ほどと、ただ同然だ。