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余裕資金はすべてNISAに

 月々3万円の積み立てでも、NISAなら50年で3000万円ちかい税金が非課税になる。譲渡益や配当・分配金に税金を払いながら、信用取引や空売りでそれ以上の利益を出せるひともいるかもしれないが、運用益に20%(分離課税)から50%(所得税・住民税の最高税率)の税がかかる以上、ほとんどの投資家はどんなに頑張っても税コストを埋めあわせることはできないだろう。

「投資の収益に対して税金を払わなくていい」というNISAのメリットはあまりに大きいので、課税口座での株式投資だけでなく、不動産や金の現物取引など、それ以外の投資をすべて無意味にしてしまう。今後は、「余裕のある資金はすべてNISAで運用する」というのが資産形成の王道になるだろう。

 NISAの口座は18歳以上で開設できるので、これがどれほどのパワーをもつか、夫婦と子ども2人で月20万円(5万円×4人)を積み立て投資するケースで試算してみよう。

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 もちろん夫婦2人で10万円ずつ積み立てても同じことだが、子ども1人あたり年間110万円までの贈与は非課税なので、子どものNISA口座で運用すれば、非課税で資産を贈与することができる。――この場合、最初の30年間で非課税の保有限度額(1800万円×4人)に達するので、それ以降は積み立て無しの運用のみになる。

 現実には「夫婦で30代からNISAへの積み立てをはじめ、子どもが18歳になったら口座を開設する」という順番になるだろうが、一家4人で同時にNISA口座を開設し、それぞれ月5万円を積み立てる簡略化した試算をすると、年利回り7%という保守的な想定でも、投資元本の7200万円に対して50年後の世帯資産はおよそ10億円(9億8541万円)になる。利益は9億1000万円、節税額はこれに20%をかけた1億8000万円だ。

 NISAはいつでも解約できるが、この(かなり極端な)試算からは、いったん積み立て投資を始めたら、長く続ければ続けるほど複利と非課税の効果が大きくなることがわかる。それと同時に、資産形成にこれほどのパワーがあるのだから、それ以外の投資に資金を配分する理由がないことも理解できるだろう。

本記事の全文は「文藝春秋」2024年7月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています(橘玲「臆病者のための新NISA活用術」)