高速道路上で発生する事故の多くは追突事故であり、2023年の警察庁発表資料によると、車両相互事故の8割近くを追突事故が占めている。車間距離の短さや前方不注意といったヒューマンエラーが、絶望的な長さの渋滞を生むこともある。
一般に、車間距離は「停止までに必要な距離」をキープすることが望ましいとされる。車種や天候にもよるが、高速道路上では「時速100kmで100mほどの車間距離」というように、「速度のキロ数と同程度のメートル数」がおおよその目安になる。あるいは「前走車が通過したポイントを自車が通過するまで3秒」といった測り方もある。
高速道路上でこれだけ車間距離をとっているドライバーはおそらく少数派と思われるので、意識的に車間を開けていくことが大切だ。この点でも、個々人の主観に頼らないACCの利用は有効である。
タイヤの状態を知らないまま走る「普通のドライバー」
運転以外の面で見落としがちなのが、出発前の点検である。JAFの資料を見ると、高速道路上で生じるロードトラブルの約4割がパンクやバーストなどの「タイヤ関連のトラブル」であり、去年のお盆期間(6日間)だけで723件の救援が発生している。
このトラブルの多さは、タイヤ点検に対するオーナーの意識の薄さにも起因しているだろう。日本自動車タイヤ協会(JATMA)によるアンケート調査では、2019年から2020年の年末年始に長距離を運転したドライバーのうち、事前にタイヤを点検した人の割合は「38.1%」に過ぎなかった。6割以上の「普通のドライバー」は、タイヤの状態を把握しないまま長距離を運転していたことになる。
実際に、高速道路を空気圧不足で走っているドライバーも多い。先のJATMAは定期的に各地でタイヤ点検調査を実施しているが、2023年の集計を見ると、高速道路においては対象車両の「36.2%」が空気圧不足の状態だった。
多くの車が観光や帰省に向かうなか、ロードトラブルによりポツンと道端で救援を待つ車……休暇シーズンに必ずといっていいほど目にする光景は、誰にとっても無縁ではない。
とくにタイヤの状態は月に一度のペースで確認し、長距離移動の際の事前チェックも忘れないようにしたい。やり方がわからない場合には、ガソリンスタンドやカー用品店で実施している無料点検を利用するとよいだろう。
「渋滞を起こさない運転」は「安全運転」にもつながる
以上のように、渋滞の原因となるドライバーの特徴として、「上り坂で速度を落とす」「右車線を走りつづける」「車間距離をとらない」といった点が挙げられる。これに加えて、車の点検不足も事故やトラブルの原因となり、混雑を悪化させる可能性があるだろう。
もちろん個々人がどれほど気をつけていても、交通量が道路のキャパシティを超えてしまえば、渋滞の発生は避けられない。しかし一方で、ドライバーの不注意や判断ミス、あるいは「何気ない習慣」が渋滞を悪化させてしまう面も少なからずあるだろう。
十分に車間距離をとり、なるべく左側車線を走行し、上り坂では速度をキープする……こうした運転は、必ずしも自身の到着時間を早めてはくれないが、周囲の流れを円滑にし、余裕のある安全運転にもつながるはずだ。