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日大アメフト問題 「昭和だったもの」が国民の怒りになるまで

明るみに出た、強烈な古臭い論理

2018/05/24

日大内部の論理、昭和の精神

 今週の週刊文春で、内田監督の囲み取材ではしっかりと選手のラフプレーを見て評価しているにもかかわらず、記者会見では他の事に気を取られてみていなかったと平然と嘘を言う。そもそもほとんど監督と選手との間で言葉を交わさずコミュニケーションを取っていなかったにもかかわらず、あの選手は三年になってからメンタル面で成長していないと評価を下す。これでも日本大学だから、名門だから恵まれた環境でアメリカンフットボールができると優れた選手が放っておいてもやってきていたからだとすれば、何とも残念なことです。

 そして、おそらくこの問題は氷山の一角で、いままでも、選手を潰すプレーが横行していたり、監督やコーチによる理不尽な指導が繰り返されてきていたのでしょう。日本大学だけでも集団アメフト退部事件などもあり、これからも事件はいくつもほじくり返されることでしょう。

 相撲協会など他のスポーツの事例と今回日大アメフト部の問題の根源が異なるのは、日本大学は日本でも有数のマンモス私学であり、多くの教職員や学生を抱え、文部科学省から多額の助成金を受け学校法人を運営していることです。叩き上げの専務理事であった内田氏の問題を把握しながら理事会にもかけなかったのは、問題を軽視したというよりは、問題を認めて学校が公式に内部で協議をすると理事が問題を起こしたとしてこの助成金を削減されたり停止されたりしてしまうところに大きな理由があると見られます。

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日大・内田前監督 ©時事通信社

 ましてや、日本大学はすでに他の媒体でも既報で写真も出回っている通り、枢要な役職の人物と反社会的勢力との深い交流を示唆する情報があったり、各学部での入学者数超過、アカハラ自殺、国税突入など、まあいろんなことが起きているようではあります。これだけ大きな大学だからそういうこともある、気にせず大きな仕事に取り組んでいこうというのはやはり昭和的な精神だからなのでしょうか。

 記者会見後に監督や司会をした大学広報が入院をしたことに抗議して、臨席したマスコミの側も抗議の入院をするなどして、終わりゆく平成を代表する名事件にしていっていただきたいと願います。

「単に面白いだけ」で終わってしまう事件ではない

※ 論の最後に蛇足ですが、日本大学のこの事件は、被害者にとってはやるせない話ですし、加害者になってしまった選手にとっては選手生命を絶たれる大変な不運に見舞われたという点で、大変に物悲しい事件です。また、そのバックグラウンドには日本大学自体が持つ闇の深さからくる興味や、出てくる登場人物がまた特徴的で、いつまでもいじっていたいという気持ちになる、奥の深い出来事であることは間違いありません。

 一方で、日本大学自体が抱える問題や、アメリカンフットボール界隈全体のラフプレーに関する考え方まで立ち入らない限り、この問題は「単に面白いだけ」で終わってしまう事件です。問題山積ながら日本大学には日本大学の良さがあり、日本大学で学んできた人たちや、入院した日本大学病院で治療や研究に従事している医療関係者とは本来切り離して考えなければならないというむつかしさがあります。

 今回、この問題で気になっているのはメディアが日本大学のこの問題で明らかに国民を怒らせにかかる、盛り上げる方向で話題を持っていっていることです。記者会見を開いた選手に対するマスコミからの質問は、ほぼすべてが監督やチームに対する不満や恨み言を言わせようと促すものばかりで、事実関係の追加や確認に関わるものが皆無であったことは、よく記憶しておいて良いのではないかと思います。

 ワイドショーその他日本のテレビ局やマスコミも仕事として事件取材をし、記者会見で質問をしているので、必ずしもすべてが不可思議だというものではありません。数字づくりで苦労をしているから何としてもこのネタで盛り返していこうという気持ちが前のめりになっているのだとしたら、無駄に感情を揺さぶられた国民が何かの話の拍子に、逆にテレビ局の方向を向かないといいなあと思ったりもします。

日大アメフト問題 「昭和だったもの」が国民の怒りになるまで

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