勢力の縮小は神戸山口組側だけでなく、6代目山口組でも起きている。2011年までに全国で整備された暴力団排除条例による資金源への規制の強化、反社会的勢力を排除する社会情勢などから構成員は減少している。

 分裂時の2015年は約6000人だったが、2017年には約4700人、2020年には約3800人。最新データでは約3300人へと減少したが、いまだに国内最大組織であることに変わりはない。

 暴力団社会全体が縮小するなか、6代目山口組が3000人以上の構成員を維持できている背景には、神戸山口組から移籍する組織の存在があげられる。中でも業界を騒然とさせたのは、神戸山口組の中核組織だった山健組の移籍である。

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6代目山口組の高山清司若頭

 神戸山口組は山健組や宅見組、池田組、侠友会、正木組の5組織が中核となり計13組織が6代目山口組を離脱して結成された。神戸山口組組長の井上も、元は山健組の組長である。

 しかし井上から組長の座を譲られた中田浩司は、2021年に6代目山口組へ移籍。移籍の理由については不明のままだが、「カネの問題、返しの禁止などが理由と考えられる」(捜査幹部)という。警察当局の未公表のデータによると、移籍時の山健組の構成員は約600人という巨大勢力だった。神戸山口組にとっては取り返しのつかない移籍劇だった。

 神戸山口組からは山健組だけでなく、宅見組、池田組、侠友会、正木組といった結成時の中核組織がすべて離脱か解散し、四分五裂の状態だ。

「神戸山口組の井上組長がそれでも白旗を上げないのは…」

 分裂劇を注視し続けてきた首都圏に拠点を構える指定暴力団幹部は、抗争の行方をこう語る。

「分裂による対立はすでに決着しているようなもの。神戸山口組の井上組長がそれでも白旗を上げないのは、組のために懲役に行っている者たちを待つ意味もあるのだろう。亡くなった者もいる中で、自分だけ組長の座から降りられる訳がない。同様に6代目山口組の司組長も、高齢などを理由に後進に譲れば神戸の独立を認めることになる。だから、相手が降参するまで辞めないだろう」