井上の自宅では、2022年6月にも6代目山口組系組員が拳銃で17発を玄関に向けて銃撃する事件も起きている。

 近年は対立抗争事件は減少傾向にあるとはいえ、6代目山口組と神戸山口組の抗争では拳銃による幹部の殺害や、米軍が公式採用している自動小銃「M16」を乱射する凶悪事件も発生している。

 その他にも、対立する事務所への発砲、大型ダンプで事務所に突入、火炎瓶の投げつけ、繁華街での乱闘などが連日のように発生した。双方とも全国に傘下組織があるため、事件は関西地方だけでなく東京都内、東海地方、東北などにも広がった。

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神戸山口組の井上邦雄組長

 抗争に備えてか、暴力団業界ではアンダーグラウンドでの拳銃の取引が活発化するとともに、価格が高騰する現象が警察当局によって確認されたほどだった。

2800人いた神戸山口組から主要な組織が次々に脱退

 分裂前の2014年末時点では、6代目山口組の構成員は約1万300人だった。その巨大組織が分裂した理由を、警察当局の捜査幹部はこう語っている。

「分裂の最大の原因はカネだ。毎月の100万円単位での上納金やその他の金銭の徴収が厳しかったため神戸(山口組)側が不満を募らせていた。6代目山口組組長の司忍がナンバー2の若頭に据えた高山清司の強権的な組織運営も、分裂の理由にあげられる」

 こうした背景があったため、神戸山口組は離脱当初は「カネのかからない組織運営」を標榜し、多くの加入者を集めた。しかし、その後は神戸山口組でも上納金の徴収が激しくなり、離脱する組織が急増、そのうえ6代目山口組が引き起こす事件が続発し神戸山口組の縮小が始まる。

 2017年には神戸山口組の中核組織だった山健組内から一部グループが構成員約400人を率いて離脱、現在は絆会として独立して活動している。2020年には、同様に中核組織だった池田組も脱退。こうした再分裂劇で当初2800人を擁していた神戸山口組は2018年には約1700人。2021年には約510人へと大幅に減少、最新データとなる2024年末時点では約120人となった。

 前出の警察当局の捜査幹部が背景事情について解説する。

「ヤクザのケンカはやられたら即座にやり返すもの。しかし、6代目(山口組)が攻勢をかけてきても、神戸(山口組組長)の井上は『返し(報復)はするな』と厳命したらしい。理由は分からない。この点も不満のひとつではないか」