――たしかに、映画を見ていくうちに、私たちはこれからハルエさんたちが語ってくれたことを引き継いでいかないといけないな、という気持ちにさせられました。松原さん自身もそういう意識があったんでしょうか?
松原 受け継がねばと感じました。そういう気にさせる力が、ハルエさんにはあったんです。それは彼女が自分の力でいろんなものを切り拓いてきた人だからだと思う。彼女の話を聞いた人は、必然的にその力に突き動かされていくんです。
――そうして改めて映画の製作が始まったわけですが、新たに撮影したものを追加するだけでなく、具体的にどのような変更を行なっていったんでしょうか?
松原 まずは、満州で起きたことをもっとしっかり伝えたいなという思いがありました。碑文が完成し、犠牲となった女性たちが笑顔で語れるようになったことは本当によかったと思うけれど、彼女たちがこうして笑えるまでにこれほどの時間がかかってしまったこと、その罪深さも同時に伝えなければいけない。背景には戦争があり、満州事変がある。そして戦争がなぜ起きたかといえば、それを引き起こした人たちがいる、政治判断をした人がいるからだという事実を、より明確に伝えなければいけないと思いました。
少なくとも満州事変を首謀した人たちとして、石原莞爾や板垣征四郎については顔と名前を出して伝えることにしました。「性接待」がなぜ起こったのかを考えるためにも、映画では、戦争が起きることになった経緯やそこに関わった人たちを描き、考えて欲しかったのです。
互いを支え合う女性たちの連帯があったからこそ
――戦争の話であり性暴力のトラウマから解放されていく話ですが、同時に女性たちの連帯を映した映画でもあるなと思いました。被害を受けた女性たちは、いつも誰かの家に集まっては、お酒を飲んでみんなで泣いたり慰め合ったりしていた。また手紙でもやりとりを続けていた。そういう連帯の形が表からは見えない場所で続いていたということに感動しました。



