――そういう意味でも、彼女たちが連帯し、声をあげたことで社会が変わっていく様を記録として残したこの映画には、本当に大きな意味があるなと実感します。
松原 ハルエさんたちがみんなでつないできたものを、私がたまたま引き継いだんだなと思っています。社会は、性被害を明かすのは恥ずかしいことだと思わせ長年被害者の声を封じ込めてきた。でも女性たちが手を取り合って語り継ぎ記録してきたことでようやくその風潮を打ち破ることができた。その記録を、また次につなげていければと思います。
――最後に、ポスターにもなった写真について聞かせてください。劇中でも使われていますが、彼女たちの昔の姿がはっきりと映されていて、胸をつかれました。
松原 写真を見ると、みんな本当に幼くて前途に希望を持つ女性たちだとわかるんです。青春まっただなかの少女たちが、大人たちによって性暴力を強いられた。それがどれほど酷いことだったか、少女たちの顔を見ると痛いほど伝わってきます。胸が苦しくなる。彼女たちを匿名の存在としてではなくて、実在ある存在として伝えたい。そのためには、しっかりと顔を映したい。そう思って、テレビでは3人しか顔を出せなかったんですが、映画ではなるべく多くの女性の存在を伝えたいと、家族や遺族の方に何度もお願いをしました。
「お母さんがそんな目に遭ったことは外に出さないでほしい」とおっしゃっていた方もいましたが、「こういう被害を二度と起こさないためにも、この痛みをリアリティをもって伝えたいと考えています」と何度もお手紙を書いていたら、完成の直前に「家族で話し合って、おっしゃっていることがよくわかりました」と了承をいただけました。
映画が出来上がってポスターを送ったら、みなさん喜んでくれましたね。「お母さん、可愛いね」と言ってくれて。本当にありがたかったです。
まつばらふみえ/1991年にテレビ朝日に入社。政治部、経済部記者、「ニュースステーション」「報道ステーション」のディレクターを務め、経済部長を経て、2025年7月からビジネス開発担当部長。23年に映画『ハマのドン』を監督。テレメンタリー「史実を刻む~語り継ぐ“戦争と性暴力”~」でアメリカ国際フィルム・ビデオ祭銀賞。



