プロセスを重要視した皇族の結婚
2005年の紀宮清子内親王と黒田慶樹さんが結婚した時の納采の儀は、それとは少し異なる。まず、黒田さんのいとこである黒田直志さんが黒田家の使者として、納采の品の目録を携えて皇居を訪問する。宮殿桂の間には、納采の品である清酒3本、白い絹のドレス生地、鮮鯛2尾(この時は本物)が並べられ、黒田直志さんが湯浅利夫宮内庁長官に目録を手渡し、「清子内親王殿下と黒田慶樹氏のご婚約にあたり、納采のため参上しました。お品をお納め願いとうございます」という趣旨の言葉を述べた。
その後、湯浅長官は天皇皇后と清子内親王に納采の品が届けられたことを報告し、使者の黒田直志さんに天皇皇后が納采の品を受けとったことを伝え儀式は終了する。つまり、直接目録を受け取った高円宮家とは異なり、天皇皇后は宮内庁長官を通じて、儀式を行ったのである。
また、この時は清子内親王が天皇皇后や皇太子夫妻、秋篠宮夫妻にあいさつし、小泉純一郎総理大臣や三権の長、皇族などから祝賀のあいさつを受ける行事を行った。また納采の儀に前後して、天皇家の使者である侍従が黒田さん宅を訪問。背広2着分の濃紺の生地や清酒、鮮鯛を贈った(「朝日新聞」2005年3月19日夕刊)。つまり、天皇の娘と結婚式を行うような品位を保つための生地などが結婚相手に送られたのである。このように、皇族の結婚は様々な儀式を経てなされる。プロセスが重要視されているとも言えるだろう。
なお、男性皇族が結婚する場合も、相手の女性の家へ使者が向かい、納采の品を渡すという儀式が行われる。ただし、儀式の内容は本人の立場や状況によっても変化があるようである。しかし、男性であっても女性であっても、皇族は婚約するにあたって、必ず納采の儀を行う。それによって、相手は正式な婚約者となる。