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【イベントレポート】文藝春秋×Domo リーダーズカンファレンス SeasonⅡ|逆境が組織を強くする 「世界」で戦う ~ データに基づく「戦略」と勝利を呼び込むリーダーの「実践力」 ~

 新型コロナウィルスの流行に端を発する「パンデミック宣言」からまもなく2年が経過する。

 ウィズコロナの生活が続く中、この逆境を契機に社会構造やビジネス構造の変革に挑むリーダーは、どのような戦略を描き、コロナ後のさらなる成長を見据えた意思決定をしているのか。

 また、「経済成長率が世界最低」と言われる日本市場だけをビジネスの対象にしていては、飛躍的な成長を描くのは難しく、世界基準で戦うべく投資や環境整備を加速させていく必要があるだろう。

 ≪世界で戦うリーダーの条件≫

① ゴールを設定し、ビジョンを共有する「構想力」「大局観」
② データに基づく迅速な意思決定「行動力」
③ 実現に向け組織に変革の風を巻き起こす「推進力」
④ 事業としてビジネスモデルを創り出す「展開力」
⑤ 失敗を許容し、失敗から学ぶことで強くなる「包容力」

 本カンファレンスでは、 データに基づく「戦略」と勝利を呼び込むリーダーの「実践力」 をテーマに、世界を舞台に活躍するアスリートの視点、企業マネジメントの視点、さらには活躍を支えるパートナーの視点から、世界で勝ち抜くための要諦について考察する。

■基調講演

 世界で勝つためのチーム作り
~ 個の存在意義を高めて、チーム力を上げる ~

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アイスホッケー女子 日本代表
大澤 ちほ氏

 大澤氏は、6歳から元日本代表選手の父の影響でアイスホッケーのキャリアをスタート。中学入学と同時にトヨタシグナスに入団。2012年、20歳の時から日本代表主将を務める。その後ソチ、平昌、北京と三大会連続で“スマイルジャパン”のキャプテンとして五輪大会に出場。北京五輪ではBリーグ首位突破の原動力として活躍した。米国とスウェーデンのチームでもプレー経験がある。

 アイスホッケーの日本代表は、国内リーグと海外リーグでプレーする選手が、代表選考合宿を経て選ばれる。チーム作りで乗り越えなければならないポイントは、「即席チーム」であるがゆえに短期間でチーム力を高めなければならないことと、「主力選手の集まり」であるため、チームのために戦える集団になれるか。この2点だと大澤氏は考えている。

 2点の実現のために実践してきたステップは、

メンバーを知る=各選手がチームにとってどんな存在なのかを把握する(コミュニケーションを取る、よく観察する、一人一人違うことを理解する)
伝えるためのベースを作る=ついて行きたいリーダーとして認めてもらう環境づくり(実績と根拠を見せる、距離感を作る)
存在意義を高める=全員で作り上げるチームになる(必要な人材を頼る、アイデアを取り入れる)

 これらの実践により、“チームファースト”の意識が高まりチーム力が向上してきた、と経験を踏まえて述べた。選手は、プレー面での貢献度だけでなくチーム作りにおいての貢献度も各自が高めていき、チームに好影響を与えることが大切だと述べた。

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 最後に、リーダーとして意識して実践してきた二つのことを紹介。
決断に責任を持つ=プロセスはみんなで、最後の決断は自分
ブレない強い芯を持つ=すべてを信じる
冬期北京オリンピック6位入賞チームを率いた大沢キャプテンは、①②を肝に銘じ、自分で信じて決断したことは最後までやり遂げるようにしている、と強調して講演を締めくくった。

■ソリューション講演

 Domoで繋ぐストーリー
~ スポーツとビジネスに共通するリーダーシップとデータ活用 ~

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ドーモ株式会社
ソリューションコンサルティング ディレクター
山下 進一氏

 山下氏は、スポーツとデータ、スポーツリーダーとビジネスリーダーなどについて、前段の大澤氏の講演をふまえて語っていく、と前置きして講演をスタート。

 世界のビジネスリーダーたちに、データ活用のプラットフォーム「Domo」は幅広く利用されている。行動を起こすため、起こさせるための“Actionable Data=アクショナブルデータ”として昨今のリーダーたちはデータを有効利用する。例えば「スポーツとデータ」では、選手の動きやフィールド内での立ち位置、行動パターンなどをカメラで撮影する個人レベルのデータ収集から、組織レベル、チーム経営レベルまでさまざまな実例がある。

 チーム経営レベルの例。NBAの1チームであるユタ・ジャズ(Utah JAZZ)は、Domoの「Apps」を使って、スタジアム内の各座席に座った一人一人の観客の行動データ分析をしている。具体的には、購買履歴、属性、観覧回数などをシーズンごとに分析して、座席販売戦略などに活かしている。多角的な分析は、選手が身につけるジャージの色や形でチケットの売れ行きが変わるかどうかにまで及んでいる、と山下氏は紹介。

 組織レベルでは、NBAはブランディングや経営のために視聴数や視聴後の反応などをCATV、インターネットTVなどメディアごとに分析している例がある。そして、Domoのスポーツ事例についての詳細はこちらのブログを参照してほしい、と提示。

 大澤氏の話にも出たスポーツリーダーの役割を引きつつ、ビジネスリーダーの役割についても論を進め、“本当のビジネスリーダー”はデータ活用の場面では、以下のような役割を果たすべき、と山下氏は提唱した。
・部署や業務を横断した全社規模でメンバーがデータの利活用ができるように推進、橋渡しをする存在=Domoではこれを「データアンバサダー」として提唱。
・データアンバサダーとしてのリーダーは、ビジネスの現場から経営層まで職域にとらわれず企業が最大限のパフォーマンスを引き出せるように、BI(ビジネスインテリジェンス)やデータサイエンスにとどまらない、アクショナブルなデータを社内外に拡散させる。

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 最後に、Domoが考える強い組織や企業とは、先ほどのアイスホッケー日本代表がそうであるように、「力量の高い個々のスーパースターが時間や場所にとらわれずに自分の能力を最大限に発揮する場」だ。個々人の活動が組織の最大限のパフォーマンスにつながるように、組織のリーダーとデータアンバサダーも、社内外から集まってきたデータを場所や時間にとらわれずに的確に分析し、ほぼタイムリーに決断し指示をするのが理想。そんな組織や環境を自分たちだけで作ることができ、新しいビジネスを創出できる環境を、データ活用プラットフォームであるDomoは提供する──と語って講演をバトンタッチした。

■特別講演

 IT部門が牽引する組織横断のエンタープライズ・データ基盤構築

佐野さん①
 
株式会社日立物流 IT戦略本部 副本部長
佐野 直人氏

 佐野氏は2022年からの「日立物流のDX戦略」についてまず言及。SCMの意思決定支援サービス(売上げ拡大)/顧客エンゲージメント向上/データドリブン経営・ESG経営支援、の3つが柱であり、“デジタル事業基盤”を構築して詳細なデータをタイムリーに分析して意思決定できる、サプライチェーン・コントロールタワーを目指していることを紹介した。

 同社では、2019年頃からIT部門内の「デジタルビジネス推進部」が中心となり様々なDXプロジェクトのスピード、精度、生産性を向上するためにデジタル事業基盤構築に取り組んだ。失敗も含む多様な経験を生かしつつプロジェクトの生産性向上とデジタル化を推進し、データ処理プロセスを標準化・共通化してきた。22年からは「LOGISTEED 2024」という3年後を見据えた新たなフェーズに入っている。

 成果として、同社の戦略投資は目的に合わせてより明確になり、改革目的達成へのKPI管理ができるようになった。その一方で、現場はデータを活用した仕事の仕方に変わっていけるのか? という大きな課題もあるという。

 顧客と課題を共有し現状把握を積極的に進め、顧客エンゲージメント向上を進める、顧客を巻き込んで物流の作業効率や在庫保管効率をより高める。そのためには、導入している「Domo」の使い方も従来のPC主体ではなく、今後は顧客と一緒に倉庫の中を歩きながら使えるスマートフォン主体のほうが受け入れ易いかもしれない、と佐野氏はコメント。

 課題解決のためには改革目的の明確化が非常に重要で、要諦として

・経営戦略に沿った「現場ごとの改革目的」を明確にする
・定期的にプロジェクトの目的を確認する
・現場では改革目的の範囲を絞り、成果を早期に出す

 の3点を挙げた。

 戦略投資案件の事業化精度向上、無駄の削減にもDomoは役立っているという。近年は、起案~PoC(Proof of Concept=概念実証)~投資企画判断段階までを自社内でDomoを利用して行うことで、外部発注コストを抑制することができるようになったという。

 DXの実践には、ビジネス設計と意識改革が重要。データ活用やAIは、洞察や予測をもたらす。しかし「それでどうする」のアクションには、適切なスキルやプロセス、変革マネジメントが必要になる。従業員が顧客エンゲージメント向上を目指して、データドリブンな考え方、改革意識を持った働き方を実践できるかどうかが重要で、それに合わせてDomoも使いこなしていきたいと言及。

佐野さん
 

 最後に人財育成についても触れた。
人財育成の一環で社員に一般的なDX研修を受講してもらったが「勉強になった」という感想のみで日々の仕事に大きな変革はなかったという。座学に終わらない育成を行い、顧客エンゲージメント向上の提案を考える人材を増やすことが大切で、Domoでデータを活用し本社改革キャラバンチームと一緒に考える研修を企画中だ。社会環境の変化から、顧客への提案アイデアを考える人材育成が重要で、社会の出来事への好奇心と自己解釈をどのように促すかがポイント。

 現場の従業員、リーダー層そして経営層がデータを活用しつつ「互いの力を結集し、ともに新たな領域へ」進むことを提言して講演を終えた。

■パネルディスカッション

 世界で戦う日本企業の人材育成とデータ活用

ディスカッション①
 
登壇者の皆様
杉原さん
 
杉原 剛氏(アタラ合同会社 CEO)
川崎さん
 
川崎 友和氏
(ドーモ株式会社 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー)

 川崎氏がモデレーターとなり、3つのトピックについて語り合った。ディスカッション中の主なコメント要旨は以下の通り。

 ① 勝ち続けるために必要な日本の人財、組織づくり

「ミッション、ビジョン、バリューの自分事化/世界に行かせる/二歩先を見て0.5歩先で勝負/自分の専門分野は自分で決定。コミットが生まれる/知見は共有し合い補完する、協力し合う/データは常にオープン/数字をベースに語る、を強く意識して実践している。採用時に適性を見るし、そういうことを実践する組織だという期待値を持ってもらう。臆せずどんどん挑戦し、小さな成功体験を積み重ねることも大切だ」(杉原)

「自分で考え、自分の責任でアクションを取ることが海外の主流スタイル。例えば息子のインターナショナルスクールの先生は、読書の際に寝転がって読もうがどんな姿勢で読もうが注意をしない。本を読む目的は、内容をきちんと理解して自分の血肉にすることであり、その子が一番内容がアタマに入る姿勢で読めばいいという考え。日本の教育とは発想が違うな、と思った」(川崎)

「スウェーデンやアメリカでプレーして感じたのは、日本の選手は海外の選手に比べ、圧倒的にハングリー精神の発露が少ないこと。持っているのかもしれないが、あまり表現しない。パックやゴールに執着し向かっていく姿勢、目の色が違う。日本人はどこか“きれいに”点を取りに行こうとする。もっとハングリー精神を強く持ち、我武者羅にアピールした方がいいと思う。海外を経験している人がもっとそのことを日本で伝えるべきかもしれない」(大澤)

 ② アクションにつながるデータ活用

「スウェーデンのチームに所属していたときは、60分の試合時間の中での細かいあらゆる行動データが試合後に各選手に共有された。それにより、自分はシュートが不得意であることがわかった。可視化されるとアタマに残るし、対策=アクションが非常にしやすくなった」(大澤)

「“アクショナブルな見え方、見せ方”は非常に大切。例えば今月と先月の売上高変動を見るとき、売上高変動のみを表示する、のっぺりとした何のインサイトも得られないグラフだと、売上げが下がったことは分かってもその要因までは理解できない。複数の要因・要素が可視化されたグラフにすると、売上げが下がった理由や対策すべきポイントが明確に分かり、次のアクション=打ち手がひと目で判断できる」(杉原)

「チームから上がってくる報告は得てして、結果が良く見えるデータのみを記した“いい感じ”のものであることが多い。大切なのは、問題がどこにあって、この問題を解決するにはどういうアクションをすればいいか、を把握すること。経営者はそこを見抜けなければならない」(川崎)

「最近私は“スマホ”で経営している、と言ってもいい。いいデータも悪いデータもすべて1時間おきにスマホのDomoの画面で見られる。いつでもどこでも意思決定ができ、すぐにチャットなどで指示しアクションにつなげることができる」(杉原)

「リーダーは率先してデータを見て、使いこなさなくてはならない。いつでもどこでもデータを確認して指示が出せるという姿を、経営者は見せ続けなくては。そうすることで、組織の中でのデータ活用はより活性化する」(川崎)

話している雰囲気
 

 ③ 日本のリーダーシップに必要なことは

「リーダーはチーム内で率先垂範しなくては。そこではじめて付いてきてくれる人がでてくる。日本代表チームのほうが、まとめる・束ねるのは容易。なぜなら、代表チームのほうが目的が明確で、全員が同じ方向を向いているからまとめやすい。試合にとにかく出る、試合で活躍する、大会で優勝する……といったふうに目標が微妙に違うと、束ねるのは難しい。目的を明確にし組織内で徹底することが大切」(大澤)

「高い志を持ち、明確なゴールを設定・共有し、そこに向かって邁進し到達するためのアクションプランをつくるのが経営者の仕事だ。絶えずコミュニケーションをし続けることが大切。また、ある程度の権限委譲も必要」(杉原)

 最後に川崎氏が、データ活用への提言を行った。
「企業がデータ活用に成功しない理由は、社内の関係部門をつなぎ、リードする役割が不在であること。経営者/IT部門/業務・事業部門の協調が『十分できている』と回答した会社は、アメリカが40.4%であるのに対し日本はわずか5.8%。約7分の1程度に留まっている(出典:情報処理推進機構 DX白書2021)。本来、経営者/IT部門/業務・事業部門が三位一体にならなければいけないのに、実現していない」

「Domoは企業内に、データ活用を失敗させない『データアンバサダー』という専門職を置くべきと提案している。DXの推進、データドリブンなビジネス環境の構築、データ活用に向けた企業文化の醸成を担うハブ的存在がデータアンバサダー。いつでも どこでも だれでも どのデバイスでもビジネスの「今」を知る。人とデータと知見をアクションに繋ぐのがDomo。スポーツに例えれば、自分の今のプレーを正確に知って、直ちに対策・改善をしていく。導入会社の従業員全員がそのアクションを実行できる環境をつくるお手伝いをしたい」。こう述べてカンファレンスを締めくくった。

2022年6月8日(水) オンラインにて開催・配信

source : 文藝春秋 メディア事業局