この頃のイタリアでは、女が男を刺すのではなく、男のほうが女を刺す事件が頻発している。それもパターンは決まっていて、捨てられた男が捨てた女を殺すのが常の例。
以前は、捨てるのが男で捨てられるのが女であったのに、それがここ数年で逆転したのである。
イタリアでも、女が強くなり男が弱くなる傾向は明らかになる一方で、オリンピックを始めとした各種の国際競技会で、メダルを取るのは多くが女。フェンシングや射撃のような武張った競技でも国際的に活躍するのは女に多く、これはパラリンピックでも変らない。
食品のCMでも、以前は女が料理しそれを食べるのは男であったのが、この頃では、男が料理したのを働き先から帰宅した女が、あらおいしいわね、と食べる場面が一般的になった。
政治家たちも負けてはいない。防衛大臣、行政改革大臣、厚生大臣に、前内閣では憲法改正・議会関係担当相であった現官房長官と、前内閣から現内閣までつづいているのだから、もう4年近くも要職を勤めているのだが、その間ボロを出すどころか、並の男の大臣以上に政治家をやっている。
防衛大臣は、背が高いので威厳まであり、男の兵士たちがささげつつをしている前を歩く姿、イタリアの安全保障を一身に負う気概十分で、しかも似合っている。
行政改革を担当する大臣は、ルネサンス絵画に出てくるような楚々たる美女だが、すぐに怠けるイタリアの公務員を働かせるという、難事中の難事に敢然と立ち向っている。
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source : 文藝春秋 2017年11月号