まずは良かった、が今回の衆院選挙への感想だった。今の日本に、政治不安を弄んでいる余裕などはないのだ。誰にも予測不可能な今の世界で日本が誇れていたのは、低い失業率と安定していた政局の二つだけ。低失業率ならばアメリカもドイツもそうだが、最近では両国とも、政治の安定となると安心しきれない状態になっている。これ以外の他国は、言わずもがなの状態。
それが日本だけは、自民党だけでも絶対多数。今回の総選挙の結果を知った世界の国々は、当分は自民党政府を相手にしなければならないと、腹を決めたのにちがいない。この一事は、おカネに換えられないくらいのメリットを、日本の外交にもたらすはずである。総選挙後の新内閣がどんな構成になるかは安倍首相の心ひとつだろうが、外務大臣は続投になるのではないか。となれば、河野大臣、あなたにとっても勝負どきです。賢いだけでなく、国家のためには悪賢い外交でも毅然とやってのける外務大臣の姿を見せてください。
「希望の党」に対しては、代表の小池女史が国政には乗り出しながら国政での代表はやらないと宣言したときから、これってイタリアの「五つ星」と同じだな、と思っていた。
イタリアの「チンクエ・ステッレ」とは、コメディアン出身の男が既成勢力の壊滅を唱えて立ち上げた抗議運動が政党化したもので、IT企業のオーナーが財政面をささえている。ローマやトリノの市長を出しただけでなく、国政にも進出している。
しかし、元コメディアンで党代表のグリッロは、自分が代表する党が国政を乗っ取る状態になっている、つまり支持率30パーセントなのに、彼自身は表に立たず、彼の人気で当選してきた人々を裏で操る役に徹している。日本語ならば、院政、ということ。
これでは、民主主義に反してしまう。民主政とは、選挙に出て票を獲得することで信任を得た人にのみ、国政を担当する資格が与えられる制度だから、選挙の洗礼を経ないで裏にいて操るのでは、非民主主義的もいいところである。都知事をつづけながら国会も動かすというのでは、デモクラシーの基本に完全に反してしまうのだから。
なぜなら、責任の所在が明らかでないからだ。それで、責任の所在も不明なままに国会審議が進むという、それこそ民主政治の精神にもとる政治が、日本を毒することになる怖れがある。都政が失敗すれば、その責任は小池女史に帰す。だが、国政の場で、「希望の党」が犯した失敗の責任は、小池女史に帰すわけにはいかない。彼女は、都政を取るか、国政を取るかを、明確にすべきと思う。
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source : 文藝春秋 2017年12月号