安倍首相とトランプ大統領の首脳会談は、1951年の吉田・トルーマン会談後の戦後の日米首脳会談の長い歴史の中でも、ホスト側の米国の大統領が日本の首相を破格の待遇で接した点で異例であり、その点で歴史に記憶されることだろう。
それとともに、今回の日米首脳会談ほど課題と優先順位と協議プロセスのインターフェース(すり合わせ)の難しい首脳会談もなかった。
日米首脳会談前、日本側が警戒したのは、トランプ政権が同盟国との価値の共有にはそれほど関心を示さず、異なる分野をリンケージ(連繋)させることで対日交渉を有利に進めようとするのではないかという点だった。
そこで、日本側は会談に臨むにあたって、政治と安全保障、安全保障と経済、貿易と通貨、そして何よりも日本と中国の間のリンケージを断つことに腐心した。
政治と安全保障のリンケージの最も危うい部分は、日米共同声明に、米国の日米安全保障条約第5条遵守を明記したことで切断した。ここはもはやトランプ流「取引」の材料とはならない。この点は、今回の首脳会談の最大の成果であるかもしれない。日本は米国の指導者にその遵守義務をいちいち確認させる「お願い」外交をする必要はなくなる。
安全保障と経済のリンケージは、首脳会談直前のマチス国防長官の訪日の際、日米関係の1階部分に安全保障のブロックを構築したおかげで、経済のブロックは2階で構築することができるようになった。
貿易と通貨のリンケージは、トランプ政権の政治リビドーともいうべき保護主義的衝動が背景にあり、切り離しがもっとも難しいところだが、ここは麻生・ペンス経済対話の枠組みを設置し、為替問題を当面は、プロセス的に封じ込めた。
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source : 文藝春秋 2017年04月号