月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。驕慢の世間に浴びせられた補選の冷や水。だが、岸田の照準は「次」に——。
「たとえ1年間であっても、一度でも権力に酔い、権力から何らかの報酬を得たことがある者は、自ら進んで権力を手放すことはできない」
18世紀の英国でフランス革命を批判し、「保守思想の父」と呼ばれるエドマンド・バークが喝破した権力の魔力だ。230年余を隔てた極東の島国の首相も権力に魅入られ、その維持に計略をめぐらせる。
「補選は全勝だな。こりゃ!」
4月15日夕、首相の岸田文雄は衆院千葉5区の駅前2カ所で街頭演説を終え、満面の笑みで秘書官たちにこう語りかけた。会場が常ならぬ熱気を帯びていたのは、同日午前に和歌山市内の漁港で岸田に向かって爆発物が投げ込まれたからだった。野次馬が集まっただけなのだが、岸田はこれを自らへの声援と勘違いし、アドレナリン全開の状態だった。
事件後も選挙活動を続けることは岸田の意向で決まった。漁港から和歌山県警本部に退避した岸田に、警察側は「リスクが残る」と選挙演説の続行に難色を示した。容疑者の動機や背後関係は不明で、単独犯なのかどうかも判明していなかった。次に予定していたJR和歌山駅前の街頭演説で、再び狙われないとも限らなかった。
だが岸田にすれば、補選自体が政権の命運を左右するリスクにほかならない。リスクを取らずに権力は維持できない。
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source : 文藝春秋 2023年6月号