月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。支持率上昇で自信を深める岸田。だが、獅子身中の虫は爪を研ぐ――。
長いトンネルを抜けると、そこは春爛漫だったのか。岸田文雄内閣の支持率が季節の移ろいと連動するかの如く、3月から上向きに転じている。
日韓首脳会談とウクライナへの電撃訪問で「外交の岸田」をアピールした効果ばかりではない。年度の節目とコロナ禍の収束傾向が重なり、解放感を含んだ空気に変わってきたことも不可視の追い風になっている。加えて、国会で経済安保担当相の高市早苗が袋叩きに遭ったことも、岸田にとっては「漁夫の利」となった。
そんな岸田の胸の内では、電撃解散へのカウントダウンが始まっている。
「いやあ、良かったよ!」。岸田は3月16日~17日に来日した韓国大統領の尹錫悦との会談後、上機嫌で周辺にこう漏らした。良かったというのは会談が成功したからではない。その前後に実施された新聞テレビ各社の世論調査で、内閣支持率が揃って上昇したからだ。
岸田が最も注視していたのは、与党支持層における内閣支持率の推移だった。この数字が70%を超えなければ選挙は苦戦を余儀なくされることは、過去のデータが証明している。今回、与党支持層の内閣支持率はNHKで69%、共同通信も同水準をマークした。まだ70%を超えていないものの、昨年夏以降はダダ下がりで一時は50%台にまで落ち込んでいたことを思い起こせば、見違えるようだ。
岸田は腹心で官房副長官の木原誠二と共に、数字の変化に目を凝らしてきた。とりわけ気にかけてきたのが、俗に言う「岩盤支持層」の行方である。岸田周辺は「自民党支持層の内閣支持率を上げていくには、かつて安倍晋三政権を支えた保守傾向の強い有権者を引き戻すしかない」と見定める。
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source : 文藝春秋 2023年5月号