月刊「文藝春秋」の名物政治コラム「赤坂太郎」。「今だけ、俺だけ、ポストだけ」。勘違い政権幹部の醜悪な生態
「お前たちが知っての通り、慢心は人間の最大の敵だ」。シェイクスピアの四大悲劇の一つ「マクベス」の第3幕第5場で、魔女の支配者ヘカテーが発した言葉だ。主人公マクベスは破滅的な最期を迎える。政治家は自信過剰な生き物といえばそれまでだが、いま政権を奇妙な慢心感が覆っている。
岸田文雄内閣の支持率は菅義偉政権末期に近い低空飛行を続け、反転上昇する気配もない。一方で、自民党内に目立った「岸田降ろし」の動きがあるわけでもない。衆院解散さえしなければ、2024年9月の自民党総裁任期満了まで岸田の首相の座は安泰だ。
立憲民主党は2月19日の党大会で代表の泉健太が「政権交代」を呼びかけたが、それに続いて幹事長の岡田克也は「政権を目指して競い合うことのできる状況を少なくとも作り出す」と述べ、事実上、次期衆院選で政権交代は厳しいと表明する有様だ。これでは政権側が危機感を抱くはずもない。
弛みの象徴の一つが首相秘書官の荒井勝喜による差別発言だろう。荒井は岸田のスピーチライターを務めていたほか広報を担当し、メディア対応はお手の物だった。荒井をよく知る経済産業省幹部は「得意な分野で足をすくわれた」と指摘する。岸田は発言の翌日には更迭方針を発表した。霞が関では「閣僚を切るのは躊躇していたのに官僚は早かった」(経済官庁幹部)と批判の声も出たが、荒井自身が交代を申し出たこともあり、「やむを得ない」と岸田自身も泣いて馬謖を斬った形だ。
問題はリカバリー策だ。その一つが21年の東京五輪・パラリンピックに合わせて超党派で議論を進めていたが自民党保守派の反対で宙に浮いたままになっていた「LGBT理解増進法案」の成立だ。その舵取りを担うのが政調会長の萩生田光一だ。
萩生田は故安倍晋三の最側近として頭角を現し、今や自民党最大派閥の安倍派でも、官房長官の松野博一、国対委員長の高木毅、参院幹事長の世耕弘成、経産相の西村康稔と並び最高幹部「五人組」の一人だ。ところが……。
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source : 文藝春秋 2023年4月号