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今月はオンライン番組に3人の政治家が登場します。
最初が新番組「編集長が聞く!」の第1回ゲスト、自民党政調会長の萩生田光一さん、二人目が官房副長官の木原誠二さんで、「岸田官邸でいま何が起きているのか?」を批評家の先崎彰容さんとともにお聞きしました。そして最後が本日3月31日19時から生配信される「政界の“シン・暴れん坊将軍”見参!」の武田良太さん。これは政治ジャーナリスト青山和弘さんがホストを務める新番組「永田町未来cafe」の第1回になります。
萩生田さんは清和会(安倍派)、木原さんは宏池会(岸田派)、武田さんは志帥会(二階派)のそれぞれ有力な後継候補であり、立て続けにオンライン番組にご登場いただけるのは、ローンチしたばかりの「文藝春秋 電子版」にとって大変ありがたいことです。
ところで、萩生田さん、木原さん、武田さんには共通点がある、と私は思います。
一言でいえば、「ケンカが強そう」。もっといえば、「ちょっと悪そう」。これは決して批判しているわけではありません。むしろ評価しているつもりです。
自らの出世、保身のため、言うべきことも言わず、ポピュリズムに走る政治家、手柄ばかり欲しがり、リスクがともなう案件からはすぐに逃げ出す政治家が目につく昨今です。国民的な人気はさておき、キッタハッタに強い政治家こそ、危機の時代のリーダーにふさわしいのではないか。
萩生田さんは八王子の市立中学時代、私の1年先輩。同じ野球部でしたから、45年ほどのつきあいになります。したがって、彼の「八王子不良伝説」はよく知っています。私たちの中学校は、萩生田さんが3年、私が2年の時に新設されたのですが、開校早々に校門に他校の不良がずらりと並んだことがありました。ある先生が「君たちは何だ!」と声を掛けると、「萩生田さんに挨拶に来ました」。
萩生田さんは早稲田実業に入ったものの、すぐに野球部はやめて、2回停学になり、早稲田大学には進学できませんでした。私がオンライン番組の中で、停学の理由を「朝鮮高校との大乱闘ですよね?」と聞いたところ、「おおむね合ってるけど、大乱闘ってほどの人数じゃないよ」と答えたのには笑ってしまいました。
木原さんは私立武蔵高校から東京大学、大蔵省と、絵にかいたようなエリートコースを歩んでいますが、温室育ちのひ弱なタイプではまったくありません。高校時代の木原さんを知る官僚によれば、「渋谷のチーマーだった」。首脳会談など大事な場面でポケットに手を突っ込んでいたり、足を組んだりして批判されることもありますが、直接会って話してみると、頭の回転がめちゃめちゃ速く、ヤンチャだけど独特の茶目っ気があります。
武田さんの地元は「川筋気質」で知られる福岡筑豊。ご本人も数々の武勇伝があるようですから、直接お聞きするのが楽しみです。「サウナ議連」会長を務めているのも興味深い。
最後に特定の政治家と親しく付き合って厳しい批判ができるのかとご懸念の皆さんに、萩生田さんとのエピソードをご紹介しましょう。
萩生田さんが文部科学大臣時代、我々の恩師の喜寿のお祝いの会が地元八王子で開かれました。最初にスピーチに立った萩生田さんは隣に座る私を見ながら、こう言いました。
「今は文部科学大臣ですが、そこにいる新谷が余計なことを書かなければ、もう少し偉くなると思いますので」
私はすかさずこう言い返しました。
「萩生田さん、何言ってるんですか。私のモットーは『親しき仲にもスキャンダル』ですから」
萩生田さんも、もちろん負けていません。
「その時は刺し違えてやる!」
こうした緊張関係の中で、「生で本音」のオンライン番組は作られているのです。
文藝春秋編集長 新谷学
source : 文藝春秋 電子版オリジナル