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究極の公私混同、「歴代寄せ書きユニフォーム」が完成!

 こうした思いを抱きつつ、僕は17年春、『いつも、気づけば神宮に』(集英社)という本を出版し、この本の第二章において、「背番号《1》の系譜」という物語を書いた。ここでは、若松勉、池山隆寛、岩村明憲、山田哲人にインタビューをして、「この番号の重み」、「背番号《1》を背負いし者の宿命」を聞いて歩いた。

 その際に僕は、若松さんが殿堂入りを果たした際に限定販売された復刻ユニフォームを持参して、歴代の背番号《1》の方々にサインをもらって歩いた。……完全な公私混同である(笑)。でも、子どもの頃から魅せられ続けた背番号《1》の方々に、じっくりと話を聞くまたとないチャンスだ。生涯に一度の好機なのだ。僕は図々しくもインタビューをお願いすると同時にサインもお願いし、(たぶん)快くペンを走らせてもらったのだ。

 ……さて、すでにお気づきのことと思うが、先に挙げた『いつも、気づけば神宮に』において、取材当時アメリカに渡っていた青木宣親のコメントは収載されていない。つまり、インタビューは実現しておらず、ということはユニフォームの記念寄せ書きにも青木のサインはない。だからこそ、「何年かかってもいいから、いつか絶対にお話を聞いて、サインも書いていただこう」、そんな思いを抱いていたのだった。

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 そして、まさかの18年。青木宣親がヤクルトに電撃復帰した。残念ながら、シーズン中に取材する機会には恵まれなかったけれど、つい先日のこと。ついに青木にロングインタビューをするチャンスが訪れた。もちろん、「あのユニフォーム」も持参して現場に臨んだのは言うまでもない。

 インタビューの本題は「2018年を振り返る」というもので、日本球界復帰の経緯、どんな決意で今季に臨んだのか、復帰1年目の手応え、来季の課題など話は多岐にわたった。そして、話題が後輩・山田哲人に移り、自然な流れで「背番号《1》の重み」について語られたときに、僕はおずおずとユニフォームを差し出したのだ。

 国鉄時代の背番号《1》・佐々木重徳から始まり、若松、池山、岩村、山田の寄せ書きが並んでいるユニフォーム。青木さんの口から、「すごいですね」と感嘆の声。ここぞとばかりに、僕は背番号《1》に対する思いを語り、みなさんにサインをいただいた経緯を話し、「ぜひ青木さんにも……」と口にすると、間髪入れずに「もちろん!」と答えてくれたのだ。

歴代の背番号《1》の方々のサインが入ったユニフォーム ©長谷川晶一

 ――こうして、僕の「私的ミッション」はついに完遂された。佐々木重徳、若松勉、池山隆寛、岩村明憲、山田哲人に続いて、「青木用」に空けておいたスペースに本人のサインが入った。これで、「歴代ミスタースワローズ・背番号《1》コンプリート作戦」は無事に完了した。改めて言う、公私混同スミマセン(笑)。2018年冬、僕は得も言われぬ幸せな年の瀬を過ごしているのである。

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