公約だった「脱原発」はちゃっかり破棄
菅原一秀 経済産業相
「原発ゼロは、今この瞬間、将来的に考えても現実的ではない」
ロイター 2019年9月12日
これは経済産業相に就任してからの発言。菅原氏はこれまで一貫して「脱原発」を訴えてきた。菅原氏の公約である「10の約束」にも「原発依存低減へ、あらゆる取組みの強化!」とあり、「党内で脱原発政策を進め、全国の高速道路に太陽光パネルを設置したり、従来の2~3倍の発電効率のある発電技術を実現します」と書かれている。
しかし、省内で記者の質問に答えた菅原氏は、「原発のリスクや恐ろしさはある」としながらも「原発ゼロは、今この瞬間、将来的に考えても現実的ではない」と断言した。現在だけではなく、「将来的に」も現実的ではないというのだ。「脱原発」という公約は放棄したと考えていいだろう。
菅原氏は、菅義偉官房長官と非常に親しい間柄だ。菅原氏の両親は菅氏と同郷の秋田県で出身高校も同じ。ツイッターには「菅官房長官は常に冷静沈着で、あらゆることに気を配られる天才です。衆議院議員初当選以来、無派閥を16年間貫いてきたのはこの方がいらしたからです」と記していた(4月30日)。
菅官房長官は常に冷静沈着で、あらゆることに気を配られる天才です。衆議院議員初当選以来、無派閥を16年間貫いてきたのはこの方がいらしたからです。拉致問題を解決すべく、いよいよ訪米の日も近づいてまいりました。全日本国民が刮目する初訪米となります。 https://t.co/7mtsFbxTQK
— 菅原一秀〈経産大臣〉(すがわらいっしゅう/自民党東京9区) (@sugawaraisshu) 2019年4月30日
菅官房長官の主張が乗り移った?
菅官房長官は、脱原発には一貫して否定的な立場をとっている。2013年には小泉純一郎元首相が脱原発を政府に求めたことに対して、「(政府は)責任あるエネルギー政策を推進していくことが極めて重要。その中で、できる限り原発依存度を低減させていく」と発言(日本経済新聞 2013年11月12日)。
竹中平蔵氏との対談では「世界で最も厳しい安全基準をつくったので、これで規制委員会が認めるかどうか、だ」「当然、それで規制委員会が認めたものについては稼動という方向になっていく」と明言している(GLOBIS知見録 2014年1月16日)。
「今の原子力規制委員会の新規制基準は世界一厳しいと評価されている。そこに合致した場合、判断を尊重して、地元の理解を得ながら再稼動を進めるのが政府の一貫した考え」という菅原氏の発言は、菅氏の発言とまったく同じと言っていい。
菅氏は今年1月、日立製作所が英国での原子力発電所新設計画の凍結を決めたことについて、「安全運転や東京電力福島第1原発事故の収束を実現するためにも人材、技術、産業基盤の維持・強化は不可欠だ」「どのような方策で維持、強化を実現するか経済産業省がしっかり検討している」と原発輸出を進めていく方針について語っている。菅原氏はもはや脱原発どころではないだろう。まさに「バーベキュー内閣」の面目躍如である。