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スポーツ施設を持つ団体や地権者にとっての“福音”

 ここで「神宮外苑 高層化なし崩し」(朝日・7月25日)の記事に戻る。

 五輪はチャンス、という人たちの名前が出てくる。

《高さ制限の緩和は、JSCなどのスポーツ施設を持つ団体や、伊藤忠商事や三井不動産、明治神宮といった地権者にとって福音だった。高層化によって、土地面積あたりの収益性が高まるからだ。容積そのものが売買の対象になるため、競技施設を新設する費用を生みだすこともできる。》

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新国立競技場 ©iStock.com

 地元協議会の人はこうコメントしている。

《五輪開催にも、再開発にも、反対ではない。それでも、民間事業者の利益優先に見える開発計画と、引きずられるように規制を緩める行政の姿勢に違和感を覚える。》

 記事にはこんな一文がある。「だれのため、何のための再開発なのか」。

 これは「東京五輪は本当にアスリートファーストなのか」とセットではないか。心底そう思う。

マラソンの開催地が変更 問題の根っこはどこにあるのか

 さて、ここまで書いてきたが「五輪=神宮再開発が目的説」は実は新しいネタではない。ここ数年来、週刊誌などでは書かれてきたことだ。野次馬の私は興味深く読んできた。

 たとえば「新国立競技場、問題の構図を探る 迷走させた5人の男」(AERA・2015年9月14日)という記事では、

《都内の貴重な緑地として環境が守られてきた神宮外苑。「山手線内に残された最後の再開発地」と、不動産開発業者の垂涎の的でもあった。「規制を取り払うのは五輪誘致しかないと言われ、森の動きが注目されていた」》

《再開発には一帯の大地主である明治神宮の協力が不可欠だ。森は宗教法人を管轄する文科省に強い影響力をもつ。》

 とまで書かれていた。ここでいう「森」とは美しい自然の森ではなく「森喜朗」のことだ。

IOCのトーマス・バッハ会長 ©AFLO

 今回私は「神宮外苑 高層化なし崩し」(朝日・7月25日)という記事を紹介したが、不満なのは冒頭でも書いたように朝日は「東京五輪あと1年」的に、あくまでさらっとした書き方だったこと。

 ここらへんもっと新聞に掘り下げて追及してほしい。それともすでに東京五輪というお祭りに新聞社も参加しているからどうでもよいのだろうか。下世話な興味で読んできた週刊誌の記事のほうが本質を突いていたのでは? とも思える。

 マラソンの開催地が変更という、どう考えても“妙な五輪”。その問題の根っこはどこにあるのか。

 新聞記者の皆さん、どんどん調べて報じてほしいです。