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ピッキングのたび、早く作業をしろ、とお尻を叩かれる感じ

 現在は、まず、カートの上に緑色のトートと呼ばれるプラスチック製の折り畳み式のカゴを載せる。トートに貼ってあるバーコードを端末で読み込むと、作業開始である。端末の画面上にピッキングすべき商品が表示される。

「P-4 A241 C448
キジマ ボルトセット」

 ピッキングの作業で重要なのは1行目である。

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 P-4というのは、4階を指す。2階から5階までの各階は、AゾーンからHゾーンに分けられている(1階は、入出庫と梱包用のスペースであるため商品は在庫されていない)。次の「A241」は、Aゾーンの241番目の棚を意味する。各列には、下から順にAからJまで(棚によって若干の違いがある)の棚がある。この場合の「C448」ならば、棚の下から3番目である。その「448」番目の間仕切りに自動車部品のキジマ社製のボルトセットが入っているという意味だ。

 そのビンの中に入っているいくつもの商品の中から、ボルトセットを探し出し、端末でその商品に貼ってあるバーコードを読み込む。ピッキングした商品が正しければ、緑の画面のまま、次にピッキングする商品が表示される。間違った商品のバーコードを打ったら、「ピーィピーィピーィ」という甲高い警告音とともに、「商品が間違っています」という赤い画面に切り替わり、正しい商品を探すまで、次の作業には進めない。

 つまり、端末を持った作業では、ピッキングでの間違えは起こりえない。人為的な作業ミスが極力発生しないようになっている。ハンディー端末がなかった15年前、このピッキングミスが物流センターの作業効率を大きく落としていた。

 ボルトセットを正しくピッキングした後に出てきた商品は、

「P-4 A241 A347
神田食品研究所 無糖レモン1・8L」

 という飲料水である。

©iStock.com

 スキャナーの商品表示の下には、常に「次のピックまで●●秒」という文字が現われ、横棒が段々とゼロに向かって減っていく。

 たとえば、ボルトセットの「A241 C448」と無糖レモンの「A241 A347」は、同じ棚なのだが、ビンが違うということである。こうした場合、「次のピックまで15秒」というように表示され、1秒ごとに、横棒が右の15秒から左の0秒に向かって縮んでいく。これが女性のリーダーが言ったPTGに使われる数字だ。

 次の場所までの距離によって、「15秒」や「20秒」、「30秒」や「45秒」から、「1分30秒」など様々な数字が表示される。15年前のピッキングの目標は、「1分で3冊」という大雑把なものだったが、今は移動距離が反映されている分、より正確になったともいえる。しかし、アルバイトの視点からすると、見張られる精度が、秒単位になったという窮屈な気持ちになる。

 毎回のピッキングのたび、早く作業をしろ、とお尻を叩かれている感じだ。しかし、その時間内に次の商品をピッキングすることはほとんど不可能に思えるほど、その設定時間は短い。

 次に出てきた商品は、

「P-4 A251 D185
キャリアウーマン ブルゾン ちえみ
おかっぱ かつら ブラウス スカート メイク シール ネタ帳付き 5点セット
コスプレ用 小物 男女共用」

 これは、10月末のハロウィンの仮装パーティー用であろう。

©iStock.com

 その次は、

「P-4 A251 E464
MOLDEX 耳栓
Softies 8ペア 6600」

 ──というように、作業指示が途切れることはない。

 トートが満杯になれば、《F(Finishの意味)》を押してから、《Enter》ボタンを押した後、ベルトコンベヤーに流し、新しいトートをスキャンする。作業時間が終わるまで、この同じ作業の繰り返しである。