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「PTGで85%以上は必達の目標値です。皆さんは作業開始の10日後にはこの数値が75%に達するよう努力して下さい。目標値を超えられない場合、われわれリーダーと、どうすれば生産性が向上するのかという話し合いを持たせていただきます」

 この人は、陰気で、かつ権柄尽くな態度である。

 偉そうに語るこのリーダーとは何者なのか。

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 アマゾンの作業現場には、「ワーカーさん」と呼ばれる私のような一番下っ端のアルバイトがいて、その上が《トレーナー》、さらにその上に《リーダー》がいる。一番上となるのは《スーパーバイザー》である。全員で400人いるピッキングのアルバイトのうち、トレーナーが20人、リーダーが10人、スーパーバイザーが5人といった感じか。

 いずれも時給で働くアルバイトに過ぎない。

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 時給は「ワーカーさん」が1000円とすると、トレーナーは1050円、リーダーは1100円、スーパーバイザーは1200円──という程度だ。いずれも派遣会社と半年契約を結ぶアルバイトであり、アマゾンとの直接の雇用関係はない。要は、同じアルバイト同士である。そのアルバイトに序列をつけ、アルバイトがアルバイトを管理するようになっている。

作業は常に見張られ、目標に達しなければ叱責される

 小田原に100人ほどいるというアマゾンの社員の多くは4階の作業現場の外にあるアマゾン専用オフィスに詰めており、そのうち何人かが現場に出てきているらしい。

 おかっぱ頭のリーダーが語るPTGとは《パーセンテージ・ツゥー・ゴール》の略語である。

 ピッキング作業にはモトローラ製のハンディー端末を使うのだが、ピッキングのたびに、「次のピッキングまであと何秒」という表示が出る。たとえば、100回のピッキングで、100回ともハンディー端末が指示する時間通りにピッキングできれば、PTG100となる。その時間を、5回上回ればPTG105となり、5回下回ればPTG95となる。

 ここでは毎日、アルバイト全員の名前と順位、PTGの数字が一覧表となって張り出される。私は何度も、自分の名前を見つけようとしたが、出勤日数が少なかったからなのか、自分の名前をランキングに見つけることは1度もできなかった。ただ、アルバイトの作業が常に見張られており、作業が目標に達しないと叱責されるという点は、以前と変わらないんだなぁ、と思った。

 リーダーの簡単な説明の後、アルバイトは各自、ハンディー端末を使ってピッキング作業をはじめた。ハンディー端末の上半分には画面がついており、その下半分には、1から10までの数字と、アルファベットなどのボタンがついていた。前回の潜入時には、100件ほどの注文が紙に印刷された《ピッキング・スリップ》と呼ばれる用紙を手に持って、そこに印刷してある商品を探してきた。手作業だったのである。