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何かと出会うたびに、その狭い視野が少しずつ壊されていく感覚

――森山さんのこれまでを振り返ると、場所を変え、表現手法を変え、常に新しい世界へ進み続けている人生にも見えるのですが、今まで停滞を感じるようなことはありましたか?

森山 20代前半は、停滞というか、ちょっともやっとしていた気がします。今でも悩むことがないわけじゃないですけど、それでも進んでいるように見えるならば、それは本当に僕が人に恵まれているからだと思います。それに尽きてしまいますね。

滞在先のダンスセンターで、辻本と映像作家の松澤聡と、ゆでたまごを食べる
きゅうかくうしおのメンバーの前では、よく笑っている姿が印象的だった

――出会いを引き寄せる力があるということ?

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森山 うーん、出会いを楽しむ能力はそれなりにあるかもしれませんが、その時その時の出会いにただただ委ねていった結果なんだと思います。別に自分は柔軟性のある人間でもないし、わがままだし、視野も狭い。でも、何かと出会うたびに、その狭い視野が少しずつ壊されていく感覚が、実感としてありました。

 

「30になったらあかん」自分で決断した“イスラエル行き”

――森山さん自身が推進力を持って動いていたわけではないと。

森山 そんな気がします。自分で何かチョイスしたことと言えば、イスラエルぐらいじゃないかなぁ。イスラエル行きは、自分で言わない限りは決まらなかっただろうなと思います。

――イスラエル行きの決め手は?

森山 5歳からダンスを続けてきて、カラダを動かすことで成立するメンタルのバランスがあった中、上京して映画やドラマで忙しくなるにつれて、カラダがどんどん疎かになっていったんですよね。それが自分にはストレスになっていて、20代前半の頃はもやっとしていました。

 でもそこから、海外の振付家と出会ったり、身体的なパフォーマンス作品に出会ったりする機会が増え始めて。バランスの取り方が分かってくると同時に、外の世界を知ってみたい欲に駆られていきました。

この柔軟性。森山の肉体は、絞りきられたアスリートのような様相だ

――ここでも“出会い”が影響しているんですね。

森山 それで、29歳の時「ダンスだけを見つめる時間を作りたい」と感じるようになったんです。その頃ちょうど、脳についての本を読んでいて。脳は20歳になってもまだまだ吸収を続けて、30歳になるとある程度完成すると書かれていた。30になったらあかんってわけじゃないけど、だったら今このタイミングでイスラエルに行くしかないんじゃないかと。

率直に意見をいい合い、わきあいあいとした雰囲気で作品作りが進んでいく

――なるほど。

森山 他にも理由はあって、幸運にも20代で、面白い映画や舞台の仕事にちゃんと出会えて。様々な監督や演出家の方々と仕事をさせていただけたことが、すごく良かった。それで、日本で映画や舞台と関わることに、一瞬満足した瞬間が生まれてしまったんですよね。飽き性でもあるから、視点を変えないと、続けられる自信がないなと思いました。本当に、色々なことが重なって、イスラエルへ行こうと決めたんです。

長い間携帯を持っていないが、森山は記憶のみを頼りに目的地へぐんぐん進んでいく

――イスラエルに行ったことで変わったことはありますか?

森山 何かが大きく変わったかと言えば、何も変わっていないかもしれないですけど、もっと楽にいられるようになりました。違う目線、違う歩き方で歩けるようになって、映画の現場にいても、舞台の現場にいても、変わらないスタンスでいられる。目の前に海老蔵さんがいようと、辻本知彦がいようと、関わり方は変わらないです。

 出会いに身を委ね、ジャンルレスに芸の道を邁進する。森山未來の旅は、まだまだ続く。

写真=榎本麻美

プロフィール:もりやまみらい
1984年8月20日生まれ。兵庫県出身。幼少期よりダンスを学び、99年に「BOYS TIME」で本格的に舞台デビュー。以来、映画・舞台・テレビと幅広く活躍している。11月22日~12月1日まで、横浜・赤レンガ倉庫1号館にてきゅうかくうしおの新作「素晴らしい偶然をちらして」を上演
[チケット発売中:http://confetti-web.com/kyukakuushio2019