1ページ目から読む
2/2ページ目

「読売」が本当に言いたい部分

 同じページにはこんな解説も。

《陸自の不満の背景には、人事もある。陸海空の各幕僚長が持ち回りで担う統合幕僚長は、順当に行けば次は陸の番で、岡部氏が就くと予想されていた。だが、今回の問題で、その構想にも黄色信号がともってきたためだ。ある防衛官僚は「稲田氏や黒江氏の言動が報道されるのは、陸自が漏らしているからだ。陸自は組織防衛に走っている」と不信感を隠さない。》

 そして「読売」の言いたいのはここ。

ADVERTISEMENT

《制服組が防衛相の足を引っ張ろうとするかのようなやり方には、文民統制の観点からも問題視する声があがっている。》

「読売」は稲田氏の資質よりも陸自の動きにスポットを当てたのだ。これは前日の「(稲田氏には)与党・防衛省からも批判」という見出しとは対照的である。

 あれだけ稲田氏を叱り続けてきた「読売」が、他紙に先駆けていち早く「文民統制の観点」に重点を置いたのはどういう意味だろう。

「読売」はこのままいくと稲田氏個人の問題ではなく安倍政権にかかわると判断したのではないか。

政権の問題にしたい新聞と、したくない新聞

 その伏線となる記事が前日の「東京新聞」にあった。

7月20日 東京新聞朝刊

「記録文書『隠す』『捨てる』『ない』 政権 非開示押し通す」(7月20日 )

・南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報

・学校法人「森友学園」への国有地売却

・学校法人「加計学園」の獣医学部新設

「東京新聞」はこの3つの問題をまとめ、これらの対応で浮かび上がるのは、

「隠す」「捨てる」「ない」

 という政権の手法だと指摘したのだ。

 この3つの言葉があらためてセットでひろがると、今回の稲田問題は個人の進退の話ではなく政権の問題になってくる、ということだ。ちなみに「朝日」を見てみると、

「閣僚強弁 政権手詰まり」(7月21日)

 と、稲田氏と加計学園問題をめぐる山本地方創生相の発言をセットで報じていた。

 政権の問題にしたい新聞と、したくない新聞。各紙を読み比べたらそんな「攻防」が伝わってきたのである。

混乱招いた稲田氏 ©三宅史郎/文藝春秋

 そんな雰囲気が各紙の行間から漂う中、もう一度「産経」を見てみると、

「混乱招いた稲田氏言動 」(7月21日)と1面で書いていた。

 そこには「制服組に不信感」という「読売」と同じ指摘もあるものの、「奇抜な服装で外遊」「不安定な国会答弁」と稲田氏の言動を大きく報じていた。やはり「産経」は稲田氏個人の資質の問題だと考えているようだ。

 以前も紹介した、「トップを務めているのは、『お子さま』のような政治家だった。」(「産経抄」6月30日)というコラムといい、「最後まで」稲田氏にキツかったのは「産経」だった。