滑り落ちるように崩落か
この場所のこの石垣だけが大きく崩れた理由は、地形に大きな関係がありそうです。丸亀城が築かれている山の地盤は、北側の3分の2が安山岩です。城内を散策していても、本丸をはじめ城内の至るところには岩盤が露頭していて、安山岩を削って曲輪がつくられていることがわかります。
しかし、この岩盤層は南西方向へ傾斜しており、三の丸や帯曲輪のある城の南側3分の1は、風化花崗岩の上にかなり盛り土をして曲輪が構築されています。よって、雨水も南西方向に流れやすく、盛り土の上に積まれた南側の石垣は北側よりも崩れやすくなるようです。
細かな崩落のメカニズムはこれから検証されますが、排水機能を含め、こうした地形条件の解明も、今後の修復工事計画において重要なポイントになりそうです。
美しい石垣をよみがえらせるために
今回の崩落で、解体が必要な石材は合計で約6000個(三の丸3300個、帯曲輪2700個)とされます。帯曲輪の石垣は昭和50年代に1度修理しており、修理した石材にはその際に位置を示す石材番号をつけてあります。資料も残っているため場所を特定でき、ほぼ元通りに積み直せる見込みです。三の丸石垣の石材に番号はついていませんが、滑り落ちるように崩落したため、位置は特定しやすいと見込まれています。
本格的な復旧工事は、2024年3月31日まで、5年間の工期で計画されています。総事業費は31.5億~35.5億円、7割が国の補助金で賄われる見込みですが、残りの3割は丸亀市の負担です。市は石垣復旧シンボルマークの作成や募金箱の設置、募金付きグッズの販売などを行っています。
ふるさと納税制度「ふるさと丸亀応援寄附金」でも寄付が可能で、使い道も「日本一の高さを誇る丸亀城石垣を修復する事業」を選択できます。市民の誇りであり日本の宝でもある丸亀城の石垣が、美しさを取り戻し、後世に残ることを祈りたいと思います。
撮影=萩原さちこ
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丸亀城をめぐる旅の模様は、「文藝春秋」5月号の連載「一城一食」に掲載しています。
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