「新型コロナウイルスにはアミノ酸の構造の違いからL型とS型の2種類があることがわかっている。L型は感染した時の悪性度が高く、S型はそれほどでもない。イタリアやスペイン、アメリカなど被害の大きな国で流行っているのはL型で、日本で見られるのは主としてS型。S型に感染して得られる免疫はL型にも通用する。同じ感染するならS型のほうが安全性は高く、有利です」
ならばなぜ、その悪性度の低いS型で重症化したり、死亡したりする人がいるのか。
「新型コロナに限らず、どんなウイルスに対しても“ローレスポンダー”と呼ばれる人がいる。季節性のインフルエンザのワクチンを打っても、効果を示さない人が一定の割合で出てくる。これがローレスポンダー。この人たちは、単に免疫が付きにくいだけでなく、感染した時に悪性化しやすい。新型コロナに感染しても大半の人は無症状か軽症で済んでいます。重症化した人や亡くなった方の多くは、ローレスポンダーの可能性が高い」
現在、ローレスポンダーの人に共通する因子の洗い出し作業も世界中で進んでおり、これが効果的な予防法や治療薬の開発にも役立つはず、と奥村氏は期待を寄せる。
ウイルスと共存しながら免疫を強化する
人間が誕生するより遥か昔から、ウイルスは地球上に存在した。
「あとから出てきた人間が、大先輩のウイルスを完全に排除することなど不可能だ。ウイルスと共存し、利用することで免疫を強化し、健康維持に役立てていくべき」
と、奥村氏は提唱する。
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「文藝春秋」6月号および「文藝春秋 電子版」に掲載の「最後は『集団免疫』しかない」では、奥村氏の解説を元に、人間の生命にとって最後の砦である「免疫」の仕組みと、それを強化し、新型コロナウイルスに打ち克つ防御能力を身に付ける方法を詳報している。
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最後は「集団免疫」しかない
【文藝春秋 目次】<総力特集202頁>緊急事態を超えて ウイルスVS.日本人 山中伸弥 橋下 徹/磯田道史「続・感染症の日本史」/WHOはなぜ中国の味方か
2020年6月号
2020年5月9日 発売
定価960円(税込)